クリアストリーム事件の不条理
近頃のエアバス・ボーイングの戦いはとりわけ面白くなっていたのだがここへきてエアバスが大型機A380(写真)開発という大変な荷物を背負い込んで押しつぶされそうになっていて、更に展開が劇的になってきた。全体に欧州企業の動きは人間味があって芝居臭くて面白い。今回、A380が予定より更に7ヶ月納入が遅れることに端を発してエアバスCEOは親会社EADSのCEO共々辞任においこまれた。これには、25%株主であるBAE(英)が米国寄りの姿勢を明らかにしてきて反米のエアバスの株主というのは調子悪くて抜けたがっていた、抜けるときは持ち株をEADSが引き取る約束になっていて(プットオプション)、引き取り価格切り下げの妙手としてプログラムの不調を発表して株価操作するといった雰囲気があったのだが、思わぬ方向へ走ってしまった感じがする。
この事件が起こる前には、フランス政界を揺るがしたクリアストリーム事件のニセ密告文書の作成者がEADSの副社長だった、という話があり、これがとりわけ面白い。彼は元々ドビルパン現首相と親しい関係にあり、数年前発生したエアロスパシアル(フランスの会社でEADSのもとになった会社の一つ)のオーナー会社の社主ラガーデール氏が不審な死を遂げたことに疑問を感じてロシアマフィアによる謀殺の線を追っていた、(これは真実の可能性がある)、この過程でルクセンブルグのクリアストリーム銀行の秘密口座にわいろ口座があるとの情報を(ハッカー経由で)入手し、口座利用者リストをドビルパン氏に渡した、そのリストの中にドビルパン氏の政敵で来年の大統領選挙を争うサルコジ内相の名前がいつからか加えられていて、話が際どくなってきた。更に、話が収まりかけたところで、もう一度公に出そうということか、リストを判事に密告する密告文書事件に至った。ところがこのリストが実は偽物だったというから話はややこしい。結局サルコジ氏追い落としのためにニセ文書事件を仕組んだとしてドビルパン・シラクは窮地に追い込まれてしまった。
事件の背景にはロシアマフィアの影がちらつき、そもそもリストが全くのニセなのかどうか、誰のために誰が動いているのか不可解・不条理なことに満ちており、政界と巨大企業と、闇の部分を感じて、その面白さはフィクションを越えている。
政治がらみの闇の部分の上に絢爛たる産業がのっかているのを改めて見せつけられた思いもする。
折り重なるように事件に囲まれたEADS-エアバスはビジネスでもボーイングに追いつめられていたがここで挽回とばかりに開発中の機体A350の設計を全面やりなおしして、性能・仕様を大幅にアップして今週発表、攻勢に出てきた。
さてどうなるか、みものだ。所詮ボーイング・エアバスが巨大市場を寡占している、よほどのことがない限り一方の完敗はない。
かなり泥にまみれてきたスポーティーなゲームの行き着くところを楽しみに 高みより見物といくか。
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