DNAに刻む
簾に蝉がとまっている。やっと梅雨が明けた。
このところの不順は北極周りの冷たい気団が日本付近で南にでっぱって来て、南の暖気との境界に現れるジェット気流がなんと北風になったりして少々奇妙な配置となっていることにあるようだ。日本の東の海域は例年より温度が低く、オホーツク高気圧もまだ元気がいい。まあこの位は大したことではない。1万2千年位前から現代に至る温暖で落ち着いた気候の前は、短いサイクルで激しく気温が上下する時代が続いていたらしい、グリーンランドの11万年もの間積み重なった氷の層の解読結果をみると、現在の穏やかな気候が有り難く思えてくる。そろそろ終わりがくるサイクルにCO2の人為的急増が重なってきているみたいだ。確かに感じは良くない。
週末に明智平で雲の観察会があって雲を暫く見ていてふとロープウエーの下の斜面にに目をやったら白っぽい蝶がいた。双眼鏡で見るとアサギマダラだ。そのまま追っていると、小さい上昇気流をうまく捉えて、殆ど羽ばたかないで上昇を始めた。巧みにセンタリングをして上昇風のコアを外さないようにして みるみる上がっていく。あっぱれとしかいいようがない。海を越えて渡りをするのだから、羽ばたいてばかりはいられない。蝶のソアリングを初めてみた。
これは、と思って一緒にいた人に 少しばかり上気しながら話しても一向に驚きが返ってこない。自分で上昇気流を捕まえて上ったことのない人にはなかなか感じてもらえないのだろう。
ミクロな蝶の世界は雲を作る上昇気流とつながり、結局は地球規模の空気と水の循環の大きな気候の仕掛けにも はるか彼方で繋がっている。渡りをする生物は大昔の気候が信用できない時代の記憶をDNAに刻んでいるのではなかろうか。いざとなればどこへでも飛んでいく。キョクアジサシが北極と南極の間を渡る、というのも、そんな風に考えると解らなくもない。
毎年毎年 ”史上かってない気候”が続いても、そんなものなんだ、まだまだゆるい、と思うべきかもしれない。
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