ITの妖しい魅力
また飛行機に乗る、民間輸送機の客として。お盆だとさすがに満席だ。南行きで40000ft以上で飛行している。この日は全国的に500hp高度に寒気が入り、40000ftで間近に見える背の高い積乱雲が所々に出ている。滅多に見られない眺めだ。虹まで見える。雲の観察にはどうみても航空機で高空に上がるに限る。飛行中の旅客機
の雲画像がリアルタイムでweb上で見られるようになれば、気象の現況判断や今後の予測に強力な様に思える。特にいわゆるテーパリングクラウドのような、集中豪雨をもたらす雲の生成は、リアルに見てみれば立体的動きが解り、理解を深めるのに強力だろう。衛星画像は個々の積乱雲をリアルには捉えられないし、立体的でもない。成層圏飛行船が上げられるようになるとこれも使えそうだでも当分は上がるまい、費用がかかりすぎる。運航中の旅客機からの画像をダウンリンクするのが最も手近に便利そうに思える。
しかし物事はそうはたやすくはない。
航空機からのブロードバンドのダウンリンクは、まずは衛星に頼ることになるがここにはなかなか面白いせめぎ合いがある。
航空機から衛星を使ったブロードバンド通信事業で先を行くコネクションバイボーイングが事業を止めにするという。思ったほど需要が無く利益が上がらず事業として成り立たないようだ。
衛星を使った事業は難しいことが多い。衛星を使った世界規模の携帯電話が一時期有望視されて巨大プロジェクトが次々と名乗りを上げ、まずはイリジウム社が低軌道に66個のイリジウム衛星を上げ世界的ビジネスをはじめたが、事業成立せず間もなく倒産した。(宇宙にある衛星はまだ機能していて倒産会社から極めて安い価格で衛星システムを買い取った会社が事業を続けている)。動き始めていた他のプロジェクトも全部潰れた。地上の携帯電話網の発達で、特殊用途以外は高価な衛星電話に客が集まらなかったのは当然のように思える。更には海外通話回線も今では殆どが海底光ケーブルだ。衛星を用いた通信事業は、大規模になるほど事業として成り立ちにくいみたいだ。
航空機からのブロードバンド通信も地上の携帯電話網用に作られた中継アンテナに次々にリンクして機体が陸上を飛ぶ間はこれを使うというアイディアが米国では間もなく現実の事業となる、こちらの方がかなり設備費が安い。コネクションバイボーイングの事業撤退も地上に衛星が負けた様に見える。
ITのメカトロニックな世界は結局がちゃがちゃしたメカの部分が成否を握り、更にビジネスという極めて人間くさい世界がそのものの存在を支配する。ITビジネスは危うい、でも先へ行くには使わざるを得ない。その危うさが一方で妖しい魅力と起業家の巨大な富を引き出して、刺激的で、引きつけるものをもっていて、みていてあきない。
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