海辺の春
水星をやっと見た。水星を見ることなくして一生を終える人が多いと聞いた。そうなるところだった。肉眼では見えないというのも変な気がしたが現実だからしょうがない、金星の斜め右下にひっそりと双眼鏡の中に浮かんできた。
思い立って、早春の海が見たくて大洗へ向かった。栃木には無論海がない。暫く海を見ないと何となく息が詰まってくる。海風が懐かしいのもあるが多分その向こうに広がる世界を感じさせる開けた感触が引きつけるのだろう。
海への道は思いの外混んでいた。こんなに2月の海に引きつけられる人が多いのだろうか、解せない思いでノロノロと走っていった。所沢や横浜のナンバーが多い。海辺のアウトレットショップや水族館のせいらしい。
浜には6-7羽のセグロカモメが飛んだり休んだりしていた。写真を暫く撮っていたがその うち撮られるセグロカモメがポーズをしているように思えてきた。風に向かって飛び出しては対地的には浮かんでるようにして色んな飛び姿を見せてくれる。ずーとそんな風にカモメと戯れていた。
セグロカモメも仲間内で威嚇するような鳴き方をする時があって、その姿は恐竜のミニチュア版に見える。時々はっとしてセグロカモメの別の必死さを感じる。
ただそれだけのことだけれども、春を感じていた。太平洋の波が今日はゆるくて、浜の貝殻が綺麗で、潮風が、強くなったり止んだりまた吹いてきたり、春がにおってくる。
帰りもいやましに混んでいる。関東平野の横断道路はどうしてこうも整備が遅れてしまったのだろう、高名政治家を数多く輩出している群馬は海に繋がる道にそれ程執心しなかったのだろうか。かなり奇妙だ。それが北関東の政治風土なんだろう。
水星と北関東と何か似ているようなところを感じさせる、輝いてもいいはずなのにどこか影が薄い。海を感じさせる街はずれでぶつぶついいながら渋滞にもまれる、春だ。
| 固定リンク
コメント