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2007年3月 2日 (金)

世界は腐敗に向かってゆっくり転がっていくのだろうか

戦闘機のビジネスも冷戦が終わって少し静かになっていたと思っていたらそうでもなかった。米国と欧州とロシアそれにスエーデンが加わって所々で火を噴いている。原油高で潤うベネズエラのシャベスが米国のF16からロシアのスホーイに乗り換えたのはちょっとした騒ぎだったが、相変わらず国の勢力争いと深く結びついている。核実験を勝手にやって制裁をうけていたインド・パキスタンにさえ、そろそろいいか、とばかりに米国製戦闘機の売り込みに大統領が先頭になって走っている。あんなのをみていると北朝鮮ならずとも核実験は、やったものがち、と思うのは当然のようにみえる。

このところちょっとした話題を提供しているのが欧州のユーロファイターのサウジアラビア売り込みに関する巨額贈賄事件だ。アラビアのロレンスの時代からアラブには英国をはじめとする欧州勢が何かにつけ影響を及ぼしていたが、今度もやはりイギリスだ。イギリスEurofighter のBAEシステム社がとりまとめ会社となって開発したユーロファイターは4.5世代の戦闘機として一応現在の第1線にある、ステルス性が少々手薄な以外は能力は高い。戦闘機の能力はマルチロール性が求められて搭載能力+コンバットレンジがそのサイズを決めているのだが、冷戦時代の構想の元に開発されたものだけにF22もそうだが現在の状況にはやや大型でいくらかずれたところがある。高価で買える国は限られている。日本ではF4の次の戦闘機の候補の一つにもなっているが買える機数が政治的に抑えられている日本なんかでは高価でマルチロールな機体はそれなりに存在意義がある。アラブに向いているかはちょっと疑問な感じもしないでもないが、金がうなっていて買ってくれそうなところにはどこにでも売り込む、とりわけ政治的に影響力を維持しているアラブには、というところだろうが、ともかく猛烈な賄賂攻勢も含めてBAEは72機ものサウジアラビアからの受注に成功した。しかしながら、イギリスもそんないい加減な国ではなく、不正があったらしいという情報をもとに検察の捜査が進められており、かなりのところまで解明できて、踏み込めそうな状態になった、これにたいしサウジ側は露骨に不快感を示していて、国際問題になりかけていた、これが昨年後半の状況だったのだが、12月に入ってついにブレア政権は捜査停止の命令を検察に指示した。法的には問題ないのだが、勿論野党は騒ぐ。マクロにみればここでサウジと喧嘩しても失うものばかりで捜査停止命令はそれなりに理にかなっているのだが、なにしろ倫理観がない。どうせブレアももうすぐ終わりだからかとも思う。それにしてもサウジ側のの担当のX氏は賄賂受け取りは手慣れたものがあって、これを含めて各国からあれやこれやで100M$も集めたらしい。結局はBAE経由でオイルマネーを個人に還元しているだけで元のオイルマネーが大きいのが腐敗の原因のようにも思う。何しろ、全く同じ原油という商品がある日4倍の値段で売れ出すのだから、売値の7割以上は全くのあぶく銭だ。それも巨額で継続している、これではおかしくならないはずがない。
まだこの騒ぎは決着していない、こんなのを見ていると国の個性が透けて見えておもしろい、全くイギリスらしいしアラビアらしい。

こればかりではない、イギリスのような老獪さを感じないスエーデンのグリペン戦闘機さえチェコへの売り込みに不正があったことが最近発覚した。きりがない。

冷戦終結ソ連崩壊で世界が不正に対してどこか寛容になる空気が漂うようになってきたという気がする。冷戦の功罪はどこかで総決算が必要だが“功”も結構あったようだ。次の安定点まで世界は腐敗に向かってゆっくり転がっていくのだろうか。何がこれを止めるのだろうか、見ているしかないのが歯がゆい。

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