三宅は風の島だった
三宅島はどんな鳥がいるのだろうか、にわか勉強しながら三宅島に行った。風が強い島だった。アメダスポイントが4箇所もあるのだが、帰ってそれぞれの記録を見直してみると、結局体感した風と近いのは三宅島空港ポイント(今は閉港中、図の三宅坪田)だけだった、他の3点は風のデータはどう考えても弱い、物陰に入っているようにしか思えない。
朝5時に島の三池港に着くと火山ガス高濃度地区の港で、無茶苦茶に風が強いにもかかわらずなにやらガスの気配がある。レベル3というからガスマスク着用状態のはずが誰も付けていない、港のおまわりさんすら付けていない、確かに湯元の泉源の方が余程臭いのだから付けないほうが常識的のような気がする。しかしこんなに風が強いのにガスの気配を感じるとは油断のならない島だ。山頂部からは噴煙がうっすらと出続けていているのだが地上の風と流れる向きが違う。島に大きな渦が張り付いているようだ。ともかく風の島だ。
レンタカー屋の用意してくれたのはブレーキの甘いアメ車と床下のカバーを引きずるようにしてやたらうるさいバンだった、島のレンタカーは結構いい商売のようだ、昔オーストラリアの砂漠に実験に行ったときレンタカーが足りなくておまけにせっかく借りたクルマを次々にカンガルーやエミューに衝突させて使える台数を減らしていった時のことを思い起こしてしまう、レンタカーがあるだけ有難いと思わなくてはならない。
離れ島なんで鳥は独自のもばかりのようにさえ思える。アカコッコ、なんでこんな名前がついたのか、名前が間が抜けている。要するにアカハラの三宅版だがシロコッコはいない。 アカハラだけがここへたどり着けたのだろうか、それともシロハラはここには合わなかったのだろうか。タネコマドリ。これはてっきり種子島特産かと思っていたが結構鳴いている。以前種子島へ行ったときは秋だったので、ここではじめてさえずりに出くわした。種子島と伊豆諸島とは黒潮つながりだ、黒潮にのった船で運ばれたのか飛んできたのか、とにかく黒潮だ。イイジマムシクイ、タイロ池の森に行くとまずはこればかりだ、メボソ的だったりセンダイ的だったりしていくつかの鳴き方で鳴いて確かにムシクイだと感じさせる。ムシといえば、ハスオビエダシャクなるシャクトリムシが大発生していて頭上の木から糸で下がってくる。油断ならないが、鳥にはいい餌だ。池に落ちれば魚も飛びついてくる。豊かな原始の森だ。ムシが葉をかじる音だろうか、パリパリという音が常に聞こえる、風もあり録音はなかなか気持ちよくは録れない、いろんな音に満ちているのがかえって原始の森にふさわしい気もしてくる。面白いのはウグイスだ、サビの部分がいかにも熱帯の森のような声を出す、ここだけ聞くととてもウグイスに思えない。ミヤケウグイスといいたくなるくらいだ。鳴き声の違いだけでは亜種ともいかないのだろうが。それにしても森が濃くてその上なぜか鳥の動きがすばやくて姿をなかなか映像に取れない。カラスバトもあちこちで声はするが滅多にじっとしてその緑かかった美しい姿を見せることはない。デジタルな道具はここではあまり役に立たない、風の音に混じった声を聞き一瞬の出会いを見つめるしかない。しかしそれで十分な気がする。なにしろ鳥の声に満ちている。
森ばかりではない、風の吹きすさぶ伊豆岬の草原にはウチヤマセンニュウが飛び交う。こ れもよく見てないとすぐに草の中にもぐってしまう。メリケンキアシシギなどというシギが海辺の岩の上に座り込んでいる、これは見るのが楽だ、でも風が強い。
沖をオオミズナギドリがエンドレステープのようにひたすら列を成して海面をかすめながら左から右へと流れていく。一体何羽いるのか見当もつかない、これが全部御蔵島に集結するとは信じられない、御蔵島とはどんな島なんだろうか、行かなくては。
次第に疲れてくる。三宅島ではこんなに鳥が出るのにどうしても鳥を追ってしまう、何かせわしなくなる。やはり風だろうか。溶け込むようにして1日を無駄なように過ごすべきだった、そう思っている。何かが過剰な島だ、何なのだろう、わからない、しかしいい島だ。
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