フィラデルフィア美術館展にて
フィラデルフィア美術館展というのが少し気になって上野までクルマを走らせた。 どうして印象派のいい絵がアメリカに集まったのか、どうせ成金が買いあさったのだろう、位に思っていたのだが、そうではないらしい。印象派はその革新さゆえ出現した当時は欧州では評価が低かった、しかし建国100年程だった若いアメリカではむしろ高く評価されそのためいい絵が多く米国に渡った、ということのようだ。
やはりルノワールだ。ルグラン嬢の肖像という生き生きと綺麗に描かれた絵がポスターに使われて看板らしい、ぱっと見た目に素晴らしいが結局描かれている対象そのものを写真のように写し取っているだけだ、これに較べてまるまるとした裸婦(大きな浴女)は立体感、光、全てが画家が作り出したものだ、伝わってくる。それにしても写真ではない実物の絵はよく解る、買って帰った本や絵葉書では細やかな画家の作り出す空気が伝わってこない、やはり実物を見なければ、と思ってしまう。
1級品のいい絵が多い。ワシリー・カンディンスキーの抽象画 黄色の小絵画 と題された 絵がいい。勢いが伝わってくる。カンディンスキーというと、どちらかというと頭でっかちの印象があってフーンと思うくらいだったのだが、何故かこの絵は違う。鮮やかさがある。1914年の作となっているのでロシア革命前の第1次大戦中のパリで描かれたことになる。帰って調べてみると カンディンスキーはこの作品を描いた後革命後のソ連に戻る。レーニンは抽象画を評価したがスターリンは否定的であり、再びパリで活動することになる、しかしパリでも今度はナチスの占領にあう。ナチスも抽象画には否定的だった、結局アメリカまで逃げることはせず解放直後のパリで生涯をおえる。騒然たる時代を生き抜いている。キャンバスで時代に向き合っている。
この絵も写真では伝わらない、現物の筆づかいからくるリズムが殆ど全てかもしれない。
いい絵が多すぎる。混乱したような魅力の無いパンフレットを見ながらそう思ってしまう。
しかし今の時代は何なのだろう
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