春らしくなって
庭の桜もようやく5部咲きになり春らしくなった、ハクレンやレンギョウやヒメコブシやいろいろと花開いていい季 節だ、鳥もにわかに動きが激しくなってツグミが忙しくこのあたりを飛び交い出してそろそろ北への帰り支度を始めた、春らしい雰囲気だ。
森銑三の風俗往来を読んでいる。中で明治の初めのモース(大森貝塚の発見でも有名)の記述を紹介していてこれが感じるところがある、モースは生物の研究が来日の目的だったが、観察すべきは日本人そのもの、としてあまりにも礼儀正しい人々を次々に記述している。鍵というものが必要ない社会、盗まれるということを気にしなくていい社会、争うことをしない協調の社会、が驚きをもって描かれている、世界に稀有の尊敬さるべき社会が築かれていた。西洋化して国は発展したが失うものも大きかった、しかしもう戻れない。つい最近までこのあたりでも野菜が畑の隅で無人で売られていた、お金を置いてとれたての野菜を買っていく、とてもいいシステムだったが、バブルがはじけて失われた10年のさなかに、まさに失われてしまった、やはり野菜もお金もなくなってしまったらしい。なにか質的に失われてきた、セーフティーネットが大事だなんていう議論を竹中平蔵が力説してきたあたりから本当におかしくなって、ついには公園の金属の柵まで盗まれるようになった。失いすぎているのではないのか、戻る努力をしなければならないのではないか。感謝、尊敬、協調、、、それだけではあらわせない、ふさわしい言葉が無い。
競うように花を追って駆け巡りたくもあるが、庭のささやかな花々を静かに見るだけでも十分な春がある。
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