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2008年10月13日 (月)

Fanaticな月が

New2 秋も深まってきて夜空が美しい。月を見ればまた進んでいる新たな月面レースのことを思い出してしまう。月は昔から狂気と結び付けられていた。月のレースはどこかfanaticなところがあるようだ。
スペースシャトルは2010年に打ち止めになることになっている、2010年以降は宇宙ステーションと地上間の人員輸送をロシアのソユーズに全面的に頼ることになる。グルジア侵攻のようなことがあるとこんなシナリオはいつ崩れるか知れたものではない、米国内ではソユーズに頼るのはまかりならぬという意見も多い。アメリカのことだからどうしようもなければシャトルリタイヤの時期を少しは延長することも否定していないようだ。そうはいっても ともかく遅かれ早かれ数年でシャトルは運行終了となる。

その次はまた月だ。アメリカはスペースシャトルの後はまた月に本格的に回帰すると大統領が宣言していて、今は着々と次の月ロケットの開発が進められている。中国もインドも月だ、といって資源を注いでいるいる、こうも政治が月を指向するのは理屈ではなくせきたてるようなものを月は持っているような気がする、しかし技術の中身も色々面白いところがある。

米国の計画をみると、ハードウエアそのものがアポロ時代への回帰というところがあって、進歩とはこんな風なのだとも思ってしまう。
1960年後半の米ソ月面レースは巨大な技術遺産を残している。その直接的なものはロケット技術そのものだ。米国の次の月ロケットAresの2段目のロケットJ-2Xはアポロを打ち上げたサターンVロケットの2段目であるJ-2ロケットを改良したものに過ぎない。40年近く昔のロケットがまた役目を果たす、これが最適だという、アポロの時の進歩のfanaticな異常さが今なお感じられるというべきかも知れない。技術の進歩は先端ではQuantum Leapとなるという証のようだ。次のLeapはまだこないということか

アメリカばかりでない、ソ連の月ロケットもいまだに役目を果たしている、こちらは当時のN-1というアポロに敗れた月ロケットのメインエンジンNK33そのものが現代で使われようとしている。ちょっとした驚きだ。N-1計画でNK33は450基ほど作られたといわれる、数が多いのは1つのN-1ロケット1段に30基をクラスタして用いる計画だったためらしい、アポロに負けてプロジェクトが頓挫したときに政府の指示で全てが廃棄されるはずだったが、エンジンは極めて優秀だったこともあり、ある官僚の手によって100基ほどのエンジンが廃棄されずに保存され続けた。20年数年たったところで、いいエンジンがロシアに多数保存されているという話がアメリカに伝わり実際に米国のエンジニアが見に行った、話は本当だった。現在70基ほど保存されているといわれる。米国で試験したところ問題なく作動し現在のロケットエンジンに比べても推力あたりの重量が軽く現在の水準をも凌駕する優秀なエンジンであることが実際に確認された。こちらも狂おしいばかりの進歩を果たしていたことになる。それではと残されたNK33を再び使って米ロでビジネスを展開する構想に発展した。アメリカのロケットベンチャーのキスラー社がまず飛びついた、日本のJ-1の後継ロケット構想でも1段目に使う計画が進められた、ところが、時がたつにつれキスラーの経営がおかしくなり、またJ-1後継から転進したGXも計画変更で結局NK33を使わないことになってしまった。ここまでプロジェクトに見放さTukiyo れ続けてきたNK33にはなにかつき物でもついているような気もする。どうなることかと思われたが、ここへきて古株のベンチャーであるオービタルサイエンス社がNK33を同社のトーラス2ロケットに使うことにした、更にこのロケットが今年2月、NASAからスペースシャトル終了後のステーションへの安価な物資補給ロケットとして指名された、ようやくまともに使われることが決まったことになる。うまくいけばよいが。どうも月ロケットを巡る話題はあちこちで常識をはみ出したfanaticなところがある。考えてみれば、米ソのロケットはそもそもがナチスのフォンブラウンに源がある、V2ロケットを完成させたフォンブラウンはアメリカに渡り先頭に立ってアポロを成功させた、ソ連はナチスのV2ロケットを多数捕獲してこれを参考に開発を進めてできたR-7ロケットで初めての人工衛星を打ち上げ更に改良・発展させて今も使われているソユーズロケットを完成させた、こんな歴史が怪しい香りを潜ませているわけかもしれない。

月は今日も中空にあって明るくもどこか妖しく夜空を照らしている。

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