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2008年11月 5日 (水)

朝霜降る尾瀬にて

ジェット気流が南へ次第に下がって秋の高い空と冷え込む朝をもたらすようになってきた。朝霜の景観がすごいという声に誘われて晩秋の尾瀬を歩いてみた、驚くことが幾つかOze1あった。鳩待峠までクルマで行く、連休の土曜日だが駐車場は十分余裕がある、天気が 悪いせいだろうか、1日2500円という駐車料の高さもあるようだ、途中の料金表示看板の前でためらっている車もある。雨が殆ど上がった昼前から尾瀬ヶ原へ向けて歩き始める、非常に立派な木道が整備されていて驚くばかりだ、1ヶ月前に歩いた裏燧林道とは大違いだ。追い越していく若いグループはほんとに荷物が小さい、この日はそれほど強い印象でもなかったが翌日の戻りでは良く晴れていたせいもあって、峠から降りてくる人人のあまりの軽装と殆ど荷物のなさに驚く。3歳か4歳くらいのほんとに小さな子供をつれた姿もみる、公園の散歩と雰囲気が変わらない、特に中国からの団体旅行者らしい姿にその傾向が顕著だ。晩秋の尾瀬は天気が急変すると遭難もしかねまじきところだ、以前、有名な登山家がこの時期の尾瀬で遭難死したことすらある。どうなってしまったのだろう、そのうち何かが起こりそうだ。至仏の麓の山の鼻の小屋まで下る、ここの小屋の一群も立派だ、しかしもう閉めている、冬支度で片付け始めている、今は竜宮小屋しか開いていない、そんな時期だ。次の日に行ったヨッピ橋は雪が積もっても橋が壊れないよう板がはずしてあって骨だけになっている、相当な覚悟がないと渡れない、そんな時期だ。
山の鼻から尾瀬ヶ原に進んで来るとさすがに散歩風情の姿はなくなる。今度はカメラマンらしい重厚なカメラ装備の姿が目に付くようになる、勿論にわかカメラマンも多いのだろうが殆どがとにかくデジ1眼を抱えている。これはまあ驚くには当たらない。尾瀬ヶ原は広い、あまりに平坦だ、歩いていると次第に飽きてくる。後ろに至仏 前に燧を見てひたすら歩く、ぼこぼことあった層積雲が次第に取れてくる。しかしほんの小雨も時には降りかかる、と見ると虹だ、尾瀬ヶ原をまたぐように虹が出る、虹の足は平原と山の境目辺りに見える、かなり近い、飽きないように自然がしつらえてくれるようで楽しい。竜宮小屋は今や山小屋はここしか開いていないので勿論満員、1畳一人に近い詰め込みとなるがまあ山小屋らしい。これも驚くには当たらない。
日が暮れて鋭い三日月が山のかなたに沈むと満天の星が広がる、これはすごい、当然の星空にも驚きを感じる、月がなく快晴で風が弱くて星見日和だ。天の川に浮かぶ白鳥が高い。星が多すぎて、北斗星すらどれだか自信がなくなる。こんなときはそれと直ぐにわかるすばるが心強い。星が流れる。見ていると、また流れる。オーストラリアの砂漠で見た満天の星を思い出す、地平線に沈む星を飽きもせずみていたがここでも山の端に沈む星が見える、どこかこちらの方が優しい星空だ、きっと湿度のせいだろう、あの睨まれるような星空とは違う、尾瀬にふさわしい夜空だ。
そして霜の朝。夜明け前、地平の下から太陽が山にかかる雲を赤く染める、綺麗だ、刻々と色合いと形を変えていく、絵のようだというのもおかしな感じだが本当に絵のようだ。一Oze2 面の霜だ、枯れた草原の葉一枚一枚が更に細かい模様を書き込まれたように緻密な細密画の世界が広がる。ほんのり色づけられた黒白の世界に囲まれる。とにかく写真に撮る、暗くて自動露出では感じが出ない、ピントも合いにくい、すべてマニュアルで撮る、こんな撮り方は久しぶりだ、慣れると次第に思うようなトーンで撮れる様になる、スローシャッターはストックで支えてなんとかしのぐ。鳥の声が時々する、何だろうか良くわからない、つぐみもいるようだ。草原に陽が差し込むようになると霜はそこから緩やかに解け始める、草原は一時も姿を同じくしない、確かにこれはすごい。
平常の空気に変わった8時前に山小屋を出てまたゆっくり戻る。鳥も色々出ている、カシラダカ、ベニマシコ、ホオジロ、ツグミ、林に入るとコガラ、コゲラ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、キバシリ、そしてオオアカゲラ。この時期の鳥は大体がすばしこくてゆっくり見れないがオオアカゲラだけはわき目も振らずに枯れ木をつついてじっくり姿を見せてくれる。鳥もなかなかいい。
冬は本当にそこまで来ている、しかし尾瀬ヶ原の穏やかな寛容はこの広さだ、中国の団体が席を埋める鳩待の小屋の売店でそんなことをぼんやり思っていた。

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