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2008年11月10日 (月)

卷雲が

秋の空が高くて筋Ciのような綺麗な雲が浮かぶ。卷雲(Ci)の毛状雲(fib)のようだ。雲の分類は10種雲形と呼ばれる基本の類に、種と変種、副変種がつく、一応リンネの分類の体裁をとっているが、生物よりはよほど文学的で、毛状雲といった種や、変種副変種はそう名づけるには大げさでなんとなく気恥ずかしくなるような気もしてくる。卷雲の筋は氷晶の落下の筋だといわれる。その落ち方のパスで毛状になったり鉤状になったりして種名がつく、生物の種のようにDNAから識別できるというたぐいのものではない、あくまでも氷の粒の飛び方を分類しているだけだ。卷雲は対流圏の上層の成層圏との境目となる圏界面の少し下あたりにできる。高空で飽和水蒸気から氷晶が析出、地上でいうダイヤモンドダストとなって更にこれが接触しあって大きさを増しながら落ちてくる、このとき高度で風速が大きく変わると落ちるパスが刷毛でひいたような筋になるという仕掛けだ。高度で風速が変わらないと、エアマスとしては止まっているも同然なので固まりは崩れずに筋にも見えない、下から見ると雲の固まりが流れていくだけとなる。
秋になると卷雲や卷積雲や卷層雲が秋らしい空を形作る。時々、何故秋の雲というのがあるのか、と気になる。少し考えてみる。秋の空にはいくつかの物理的特徴がある。地球の気象の基本のひとつは南の夏の気団と冬の気団の押し合いにある、夏の気団は赤道で起こる多量の上昇気流がベルトとなって中緯度で下降してきて地表で高温となる背の高い高気圧を形成する、ハドレー循環と呼ばれる流れだ、一方北極では逆に冷たい重い大気が地表を覆い、対流圏の厚さを引き下げる。二つの基本的に性質の違う気団が中緯度でぶつかり押し合う、ぶつかるところにジェット気流が形成される、冬の気団では大気が地面付近に下りていってしまうため地面付近では高気圧だが上層では手薄になって低気圧になる、南の気団は全体が下降気流で層が厚く上層でも高気圧となる、風は上層の気圧の傾斜が最もきつい境目で南から北へ噴くところ南風が地球自転のコリオリ力で西風になってしまいジェット気流を形成するという仕掛けだ。ジェット気流は流管のようなもので高度で風速が大きく変化する。高層の大気の観測結果は毎日Kaze2 朝晩発表されていて容易にその状態を観察できるのだが見慣れるとこれが面白い。秋になるとジェット気流が北から押されて南へ下がってくる、ジェット気流の直ぐ北側は圏界面が低く上層のジェット気流にともなう西風もまだ強い。圏界面が低いと上層の雲もそれだけ下がり見やすくなる、また、海から出される水蒸気も上層までたどり着きやすくなる、これに加えてジェット気流の直ぐ北側は風と気温の変化が大きく上層は乱気流となり上層雲を作りやすい、おまけに低層は重い空気で安定して雲が少なくて上層雲を隠すこともない、こんなことが重なって、ジェット気流の直ぐ北側に広がる空は秋らしい卷雲や卷積雲ができやすいし見やすくなる様に思う。高い空が降りてきてくれるというのが秋の空だ。

卷雲が空の半分を覆う日、気温が急に下がった、今までとは違った鳥が突然現れるようになる、鳥が山から下りてきたようだ。渡りというほどでもない、空が降りてくるように寒い山では冬は越せないと鳥が里山へ降りてくる。これが思えば四季に恵まれた山のある島国日本の特徴ではないかと思えてくる。なかなかいい位置にある、いいくにだ日本は。

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