粟島にて
日本海に浮かぶ粟島に行った。穏やかな島だった。沿岸漁業と家庭菜園が連なったような畑の農業の、地産地消・自給自足の島だった。民宿の食事はさかなづくしで、3泊しても新しいメニューの新しいさかながでてくる。国境の島というと大げさだが本州と反対側は海を挟んでロシア、朝鮮に向き合っていて縄文時代から人が住み着いている、中世には長崎の松浦一党が占領したりで、なかなかの歴史を持っている。今の時期は、釣り客と鳥見の客が目立つ。こちらものんびりと渡り途中の鳥を楽しもう、とでかけた旅だ、同じような人たちが島の中を動き回っている。しかし見ていると鳥見の客は概して鳥を見るというより珍しい鳥の写真を撮りに来たという風情が漂う、大型の超望遠付カメラを抱えて畑のあぜ道を朝早くから行きかっている。こちらは届いたばかりの望遠レンズを付けたデジタル一眼を自宅に置き忘れてしまって、(それと気づいたのは渋滞の東北道をやっと抜け磐越に入った直ぐのパーキングエリアだったからどうしようも出来ない、)おかげで一層のんびりした旅となった。好きなように鳥を楽しむ。キマユホウジロ、コホウアカ、マミチャジナイ、ヤツガシラ、ベニヒワ、シマアオジ などという名前が飛び交うがどれも結局見れずじまい、しかし気の向くままに、さえずるミヤマホウジ ロを見たりマヒワが草っ原でつついている様を見たりツバメが巣材をとりに畑の決まったところに集まるのを見たり、トビが猛禽らしく電柱の上でハシボソガラスと睨み合うのを見たり、北の岬ではいかにもこれから海を渡りそうなヒヨドリの200羽くらいの群れがどよめきまわるのを見たり、はたまたアオバズクののどかな鳴き声が夜中響くのを聞いたり、キビタキや大瑠璃の美しい姿ばかりかただのハクセキレイがやけに美しく見えたり、普通の鳥が面白くて、それだけでも十分に楽しい時間が過ごせる島だった。とにかく鳥の種類が多い、それに何故かキレイだ。釜谷にも行ってみたが鳥の密度では北の岬、牧平周辺が一番だった。北の岬では一歩踏み出すごとに鳥が舞
い上がる、クロジなんかも混じっていて一様でないのが面白い。西海岸のオオミズナギドリの繁殖地の巣穴も近くの道路から遠望するが昼間は1羽だに姿を現さない、鳴き声を夜中に聞きに行くべきなのだろうがレンタカーも無い島では移動もままならない。ガイドがいないというのもなにかを狭くしている、今は釣客がいいお客で鳥の客は面倒見てくれない様な気もしてくる。。
鳥を追いかけようとすると疲れるがそれをあきらめると、随分といい島だ。パン、パンと竹のはじける音が印象的な録音を編集しながら、島での出来事一つ一つを蘇らせている。
| 固定リンク
コメント