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2009年5月19日 (火)

未熟な技術に満ち満ちた世界が

2月に米国東部バッファローで墜落したボンバルディア旅客機Q400に搭載されていたコクピットボイスレコーダの内容がNTSBから公表されて墜落に至る事態の推移が明らかにされている。墜落は最初疑われた着氷によるというより明らかに人の過ちが浮き彫りにされていて起こるべくして起こったようにも思える。
パイロットは47歳の男性、2日前にフロリダのタンパから回ってきたばかり(要するに着氷の経験に乏しい)、コパイロットは24歳の女性。この日は、天候からしてかなり緊張すべき飛行であるのに関わらず巡航飛行に入るとコパイはもっと自分のうちに近いところでの職は無いかとの他愛も無い話を続け、パイロットはサーブ340で遭遇したエンジントラブルの話にふける、おしゃべりが多い。ルーチンワークの退屈な飛行というニュアンスがにじんでいる。着陸降下に入ると着氷に遭遇する、この日の着氷は確かに多いものだったが通常の手順で乗り切れる程度だったと見られている、直線翼強力フラップのQ400には着氷はつらいものがあるにせよ、だ、ともかくパイロットは経験したことの無いほどの着氷に驚く、しばらくグチのような無駄話をコパイとパイロットがやり取りした後、高度2300ftでパターンに入りフラップを15度に下げかけたところで(着氷のためLiftは出ずにフラップの抵抗ばかり増えて減速)失速警報が鳴り頭が下がっていく、本来は頭を下げて加速すべきところ、パイロットは処置を誤り(恐らく低高度でQ400 本能的に突っ込みたくないという心理から)高度を保つべく目一杯引き舵を取り続けスロットルをフルに入れる、これではパワーオンの失速試験のようなもので厳しい失速スパイラルが次に控えている。遭遇したことの無い状況に遭遇したという操作のようにみえる。こんな操作をしていれば落ちる。思えば航空機はやってはならない操作に満ちている、着陸間際の低高度でのミスはリカバリできない。パイロットは(自動失速防止装置である)スティックプッシャーを力でねじ伏せて失速させ墜落させている、スティックプッシャーへの対応の訓練が十分でなかったともいわれる、最後はコパイの絶叫で終わっている。
人のやることだから間違いは起こる、破局に至らしめないにはどうするか、この場合は多分訓練しかないのだろう、フロリダで飛んでいたパイロットを突然2月の北東部バッファローに投入するのは少々無理がある、しっかりと着氷訓練をやり直さないと危なっかしい。
しかし 訓練ができたとしも、ちょっとしたことが大量死を招く、板子一枚下は地獄の世界という本質からは逃れられない。
結局は技術が足りていないのだろう、少々の着氷でも訓練不足のパイロットを慌てさせない機体とすべきなのだろう、それをローカル線のエアラインでも事業を成り立たせうる機体とすべきなのだろう、結構難しいようにみえる。
未熟な技術に満ち満ちた世界がいつまで続くのだろうか、まだまだ随分と道は遠いようだ。

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