白神山地にて
一度は行くべきか、と思うところが幾つかある、白神山地というのも気になっていた一つだ。選挙のおかげか8月は高速代が木曜から1000円となる週が設定されて これを使わない手は無いと出かけることにした。白神といっても漠然としている、インターネットや図書館で事前に調べても今ひとつ白神らしい白神はどこで感じられるのか解らない,時間切れでそのまま出かけるはめになった。解りにくいのは考えてみれば当然のようにも思える、人手に触れられていないブナの森の広がりが世界遺産の理由だしそこに魅力の中心がある、今から人手で痛めるわけにはいかない、だから白神の核心部を 訪れる多くの人に触れさせるわけにいかない、しかし地元は何とか多くの人に来てもらいたいしビジネスにもつなげたい、不確定性原理のような堂々巡りの難題だ。
訪れてみると、懸念していたように、世界遺産指定地域の緩衝部にあって最大の売りといわれる 暗門の滝は深い感動を与えてくれるほどでもなかった、いい滝ではあるが 滝に至る道もどこか吹き割の滝遊歩道を思わせるようで‘手付かずの自然’とは感じ難いし、滝としては尾瀬の三条の滝の方が遥かに迫力がある、また、近くの樹齢400年のブナのマザーツリーも観光の手垢にまみれているように見えてしまう、どこかずれている。
しかし白神ラインの途中にある核心部でも緩衝部でもない奥赤石遺伝資源保存林に踏み入れてみると手つかずのブナの原生林そのものを感じることができる、次々に色んなフェーズのブナが姿を見せる、キノコ、カラ類のような鳥の声、風、光、素直に森が感じられる。来たかいがあると思わせるに十分なものがある。十二湖の鶏頭場の池で思いがけずしっかりした8月のアカショウビンの声をきくのもまた来たかいがあったと感じさせる、深さがあって緩やかな時間を感じ取ることが出来る森だ、確かにいい森だ。
次の日は予定外の岩木 山に登ることにした。リフトで9合目まで上がってつめるだけだから散歩のようなもの、とタカをくくっていたが、さすがに100名山、ひたすら急勾配を手も使いながら登る、ついでに登るというのにはちょっときつい。この日は天候が崩れる予定の日で山頂からの眺望は望めないが時折雲の切れ間から北海道も見えるような気がする。岩木山は単純でいい、岩がありお花畑があり山頂があり眺望がある、なんだか素直だ。白神のもやもやしたところがちょっとばかり吹っ切れた感じがする。
強いられた雰囲気のある感動ではなく素直な気持ちで自然に向かう、結構難しいところがある、もしかしたら地元にとっても重いものを背負わされているのかもしれない、西目屋にある広大な環境省のビジターセンターの建物を思い起こしながらながらそんな風にも感じている。白神は難しい。
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