伊良湖岬でタカの渡りを見る
タカの渡りは伊良湖岬というのが定番のようにいわれている、そのまま受け入れるのもちょっと癪なところもあるが評判になるところにはそれなりの理由がある、一度は行かねばと思っていた。宇都宮から走って行くのでは少々距離があってお金もかかるし時間も取られるが高速が1000円になって10月初めの連休なら行けそうに思えて出かけることにした。気になる宿はリゾートホテルの伊良湖ビューホテルがいかにも優雅でよさそうだ、しかし思い立った2週間前では満杯で、とりあえずもっと浜に近い堅実な宿を取っておいた、あきらめずにネットでチェックしていたら5日前になって台風の影響かビューホテルの割安な料金プランにキャンセルが出た、これこれとばかりに切り替えて出発する。
宇都宮からは460kmくらいあってちょっとした距離だ。あまり早朝というのもしんどいんで5時50分頃出発する、首都高は7時頃に通過となったが恐れていたとおりの厳しい渋滞だ、ナビの標準時間計算より1時間半遅れでやっと厚木インターあたりまでたどり着く、やはり休日でも6時に首都高通過の計画でないとロスが大きい。あとは快調に進み浜松インターで降りて海岸沿いの下道を走る、渥美半島入り口までは大半が制限速度80kmの無料の高速道路で走るのが気持ちがいい、帰りは豊川インターから乗ったが豊橋市街地通過が時間がかかり、浜松で 下りたのが時間的にも正解だったように思う。
伊良湖岬の恋路が浜駐車場についたのが午後2時くらい、渋滞・昼食・休憩をみて2時までには着きたいと思っていたが予想通りだ。ほぼ満車だが一応駐車できる、駐車場のそこここに三脚の列だ。よく見るとスコープというより殆どが大望遠付デジ一眼を三脚に乗せている、白樺峠でよく見た双眼鏡スタイルのスコープは1つ位だ、観察するというよりどうも写真を撮ることが大きな目的になっているように思える、デジ1眼の隆盛からこうなるのはどうしようもないのだろう。それにしても一応名の通った観光地だけにタカ見が駐車場を占領するのはちょっと引っかかる感じもする、一般の人はギョッとするようだ、白樺峠とは訳が違う。
この日はノスリ、サシバ、それにミサゴなんかを見る、トビも多い、西風が7-8mくらいの感じで結構強く 渡るには向かい風だが岬の小山の上に出来る斜面上昇風を捕まえて高度を稼いでいる、確かに海 を渡る出発点としては上昇風の利用がしやすい地形のようだ、勿論東風でも東側斜面で上がれる、この感じは来て見ないとわからない。サシバはあまり出ないこともあり適当に切り上げて、岬の灯台へ散策に行く、サシバのこの日のカウントは1400くらいと聞いてやはり午前がピークのようだ。
丘の上のビューホテルは予想以上の良さで、部屋や設備がいいのは勿論、海に落ちる夕 日を眺めての風呂もなかなかのものがある、ここの屋上でタカ見とはこれは優雅だ。夜は満天の星だ、ホテルの明かりが明るいが、視野を遮るものの無い全面ガラスの部屋の窓越しにスコープで心行くまで天の川の星の海を見ることが出来る、こんなことは初めてだ、星を見るのは寒い夜空と相場が決まっている。タカ見でなくとも十二分に楽しめるホテルだ。タカ見の客は少数派で日曜日は2組結婚式も行われるなどいかにもリゾートホテルなのが、普通の感じがしてまた良くもある。
翌日は良く晴れて風も弱い、海からの日の出を屋上から眺める、なかなか素晴らしい、水平線に雲が漂っているのが南洋の雰囲気を感じさせていい、そのまま鳥見の体制に入るのだが、屋上が三脚で埋まるわけでは全く無くてぱらぱらと見ている位だから普通の泊り客の邪魔をするわけでもない、見ている感じもどこか優雅だ。間に朝食をホテルでリッチに取ってまた続ける。ハチクマが次々に現れる、そのうち9時ころホテル直上にサシバのタカ柱ができる、タカ柱を真下から覗き見、そしてサシバが上昇トップに達したところで西に向かって渡りに次々と出発するという一部始終を見ることになる、なかなかの経験だ、白樺峠 よりどちらかというと間近で、確かにタカの渡りの観察にも写真に撮るにも良いところだ。ツミという声もどこかで上がるが、見てもそうかなーと自信が湧かなかったりしてサシバ、ノスリ、ハチクマ以外の判定は難しいところがある。
タカは渥美半島の小山の連なりで上昇風をひろいながら近づいてきて岬付近でタカ柱をつくる。海側をきたり山側を来たり風によって変わるがともかくホテルで待っているとそばを通る。あきない。見ているとアサギマダラも屋上辺りに上がってくる、風を見てエイッと渡るのだろう、蝶の渡りは本当に風が勝負となるに違いない。チェックアウトした後は趣向を変えてホテルの駐車場から見上げる、チェックアウト後も屋上で見るのは勿論ホテルも了解しているのだが、機材を運びなおすのが億劫だし、駐車場もかなり眺めが良い。駐車場のヘリにもぱらぱらと三脚が並んでいる。
昼ごろには大体終りかなという雰囲気が漂い、帰路に向かうことにする、帰り着くのがあまり遅くなるのもつらい。帰り道、汐川干潟というのがあるはずと緑ヶ浜公園という所に寄ってみるが汐のタイミングが悪いのかカワウやカモメが遠くに見えるくらいで干潟という感じも無い、多分満ち潮のせいだろう、もっといいポイントもありそうだが良く調べて来なかったのと時間も無いので早々に引き上げる。渥美半島そのものが明るくてリゾートの雰囲気があってゆったり過ごすに良さそうな所とばかり感じて、どうも鳥をガツガツ追うという雰囲気とは合わない感じがする。
東名の、事故を横目の35キロの渋滞にうんざりしながら途中で食事を昼夜と2回とって、9時頃に自宅にたどり着く。少々疲れた、しかしちょっと無理して出かけるに十二分に応えてくれる場所だった。行って見なければ解らない。
タカの渡りを見ているとグライダーでソアリングする感覚がどうしても思い起こされる、自分で飛ぶような気持ちになってくる、タカが上がりのいい上昇風を捉えた時にはヤッタネと言ってやりたくなる、渡りの季節になるとタカを見たくなるのは、もう殆ど飛べなくなった今の有様の埋め合わせなのかもしれない、そんな風にも思っている。
秋もそろそろ終盤に入ろうとしているようだ。
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