旅の始まり
また暑い日本に戻ってきた、1週間ばかりカナダのカナディアンロッキーを走り回ってもうそろそろ暑さのピークも過ぎたかと期待していたが少々甘かった、再びむっとする暑さの日常が始まる。
恐ろしく刺激的な旅の日々だった。
今年最高の暑さとのラジオを聴き車外温度計が38度を示すのを見ながら成田まで車で走っていって旅が始まった。今回は旅行エージェントを全く使わない全てを自分で作った旅だ、誰にも頼れない、不安が頭の中で動きたがっているのを押さえ込む。いつもの空港警備パーキングにクルマを預けてJALのカウンターへ行くと、混みあっているため予約していた席が2階へ変わりましたと聞かされる、ビジネス席だ、すごい、これは幸先がいい、よほど大量に団体を取ったのだろう、こんな時は安い切符でもJALから直接買ったほうが強くなるようだ。ボーディングゲートの前はいくつもの高校生の制服と引率の先生でごった返している、そういえば今日から夏休みだ、747も本当に満席のようだ。もう30年以上も前に夏のノースウエストの太平洋線で仕事で西海岸から戻る時に同じように滅茶苦茶に混んでいてビジネスからファーストへ変えられたことを思い出す、とにかく混みだすと少しでも強い
切符が有利になる。まがりなりにもファーストはこの時きりで近頃はエコノミーばかりだ。本当に久方ぶりのビジネスクラスだ。
ゆったりとした席でほぼフラットに座席が倒れる、お陰で旅の始まりにしてはよく眠れる、これなら空港から直ぐに時差ぼけの頭でレンタカーで100km以上走り始めるいささか強行な日程もなんとか始められそうだ。
バンクーバでエアカナダのカルガリー行きに乗り継ぐのだが、細かい乗り換え案内図をJALがくれることはない、成田のカウンターでやっともらった本当にアバウトな図では不安があった。機体を出ると日本語の世界は終わりだ。バンクーバの国際線から国内線への乗り換えは結構歩かされる、カナダへの入国審査を終えて、どこでエアカナダのボーディングパスはもらえるのだろうかと3Fへ上がってdomestic connectionの看板に従って 荷物を押していくとエアカナダのカウンターがやっと出てくる。eチケットのプリントアウトとパスポートを渡して自分でベルトコンベアに荷物を載せる、ペラペラの自宅パソコンのプリントアウトでボーディングパスが現地で渡されるこの仕組みはやっぱり不安だ、昔の硬い切符の束で旅が始まる懐かしくも頼りげのある世界を思い起こす、世界はどこか不安なままどんどんやわらかくなっているようだ。
エアカナダの便はEmbraerのE190だった、初めて乗ったが確かに2席―2席の配置が無駄が無くていい、シンプルな座席だが短い距離には十分だ、勿論この機体も満席だ。夏はエアラインの稼ぎ時だ、それだけに1便でもフライトキャンセルが出ると連鎖的に大混乱になる、今年の夏は特に危ないとの記事がいくつか出ていたことを思い出す、そんなことがこの先起こらないことを願うばかりだ。
カルガリーの空港からレンタカーだ、レンタカーのカウンターは到着フロアーの1つ下で、エレベータで降りてやっとたどり着くがHretzは係員が1人しかおらず忙しく対応している、隣のAVISは4-5人いてすいすいはけているがこちらは手続き待ちで混んでいる、食事から戻らないのだろうか。でもしょうがない。やっとの思いで手続きを終えてキーをもらう、クルマはどこと聞くとこの壁の裏側だといって案内もしない、勝手に探して乗っていけというようだ。いつも思うが北米ではレンタカーの引渡し時はどこもぶっきらぼうだ、キーさえくれないでキーの付いている車があるんで選んで適当に乗っていけ、とばかり手続きだけの時もあった、今回はまだましというべきか。カーナビ付きを予約で指定しておいたがちゃんと付いている、80$上乗せでちょっと高いが何かの足しにはなるだろう、とにかく知らない街で一旦迷い始めると大変な目にあう。目的のバンフのホテル(Banff Park Lodge)を入力して走り始めると予定していた道と別の道をガイドし始める、日本のナビと同じだ、予想外の左折指示に車線変更が間に合わずガイドを外れる、新たなルートが指示されてまた幾つかのミスを繰り返すがそんなに大きな時間ロスなしにバンフ行きの高速に乗れる、やっぱりナビつき
で良かった。やや渋滞気味のカルガリーの街中を抜けて暫く走ると雲行きが怪しい、この日は事前の計算では不安定で雷雨の可能性を予想していたが、予想以上の黒雲だ、程なく激しいスコールになる、直ぐ前の車も見辛くなる、こんな雨は今まで経験した中で最大級だ、路肩に止まる車も出てくる。ともかくノロノロと走っていくと雷雨を抜ける、宇都宮の夏と似たところがあるがこちらの雲の方がややスケールが大きいように感じる。雨が上がったところで現れた湖の辺で一息つく。
いかにもおもちゃ箱をひっくり返したような旅がはじまる。日常はひとかけらもない。
しかしこの後に続いていく旅は、更に圧倒的な景色の中で一つ一つが刺激に満ちていた、旅はかけがえがない。暫く旅の余韻に浸ることができそうだ。旅は止められない。
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