乗鞍岳で雷鳥にあう
10日ほど前のことになる、夏休みの暑い日々が続きどこか高い山へと暑さから逃れるように乗鞍岳に登ってみることにした。無理はできなくなっていると感じていて、登り易い最も高い山というと乗鞍岳になる、100名山でもある。本当は北岳に登りたかったが、同行者が得られないし一人で早朝から走っていって1600mあまりを登り肩の小屋に泊まるのもなんだかしんどくてあきらめた、北岳へは何人かで楽しく行かないと持たないような気がする。ともかく乗鞍岳なら300mの登りで3026mの山頂につける。
天気は1週間前の予想通りの展開となった、初日は晴れている。ペルセウス流星群は雲もあって見損なったが予定通り朝5時に宇都宮の自宅を出た。北関東道、長野自動車道とのりついで松本から乗鞍高原に向かう、松本の街外れの渋滞でいくらか時間がかかったがほぼ計画通りに9時半頃乗鞍高原のバス発着所に到着する。駐車場はまだ空きがあったがバス待ちは長蛇の列だ、大丈夫かと思ったが何台もバスを連ねるようで次の10時発にはどうにか乗れそうだ。途中の三本滝から乗ることも考えてみたが、途中からでは満員で乗れないのではないかと懸念して始発からの乗車にしていた。実際には補助席分余裕があって、途中の三本滝からも乗ってくる。スノボを抱えた2人組もいる、雪渓で滑るようだ。テープで観光ガイドが流れる、この道ができたのは戦前で、旧軍の航空エンジンの高空性能試験場が畳平付近に作られたためとの説明だ、そんなことでもない限りこんな高い山に登山道路はなかなか作られない、戦前の航空機開発の必死さが伝わる。畳平の手前の雪渓の下でスノボ組みは降りていった、見ると雪渓では10人くらいが滑っている、昔から乗鞍の夏スキーは有名だが思っていたより雪渓が小さい、しかしこういう楽しみ方も良さそうだ。
畳平駐車場に着いたのが10時50分くらい、広場から少し下ったお花畑を抜けて山頂に向
かう。ルートは最後に一気に上るがそれまでは平坦だ、しかし距離は結構歩く。お花畑の途中でフィールドボランティアのような人が、あちらに雷鳥が出ています、としきりに声をかけている、どこ、と聞くと右へ分かれて2-300mくらい先の人だかりを指差す、行きかけたが まずは頂上に行ってしまいたい との同行者の声に押されて帰りに寄る事にしてしまう、帰りまでおとなしく居続けるとはとても思えないが、しようがない。先へ行く。ハイマツが見事だ、コマクサ、ヨツバシオガマ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲ、イワギキョウなどの高山植物も今が盛りでいい感じだ。広い平坦な道をたどって東大宇宙線観測
所あたりに来る、いろいろ施設がある山だ、ここで持ってきたおにぎりを食べて少しでも荷を軽くして登りにかかる。思ったよりきつくない。道幅がやや広くて自分のペースで歩けるのもある、白根山より楽だ、小さい子供も目に付く。遠くにイワヒバリも見ながら程なく山頂に着く、山頂の一番高いところには乗鞍本宮があってお守りやバッジを売っていて、3000mを超える山岳らしくない、不思議な山だ。山頂からは槍・穂高がよく見える、いつかは登れるだろうか。登ってきた斜面を下ってまたお花畑に差し掛かる、このまま行けば3時のバスに間に合いそうだが見送って雷鳥を探すことにする、しかしもう人だかりはない、行きに見ておくべきだったとしきりに愚痴りながらとにかく探していると、あれは鳥じゃないかしら、との声。視線の先に双
眼鏡を向けると確かに雷鳥だ。背中を向けて丸まっているが時折クビを上げてのんびりしている。このあたりのハイマツに居ついていると見える。前に雷鳥を見たのは北アルプス赤牛岳付近だった、数十年前になる、次に見れるのはいつのことになるだろうか、これが最後かもしれない。通る人に教えてあげるがやはり子供たちの反応がいい、年は感動する心を錆びさせるようだ、心して磨かなければと感じるがたやすくない。
乗鞍高原の宿について多すぎる食事を終えた頃雨が降り出した、予定通りだ、明日の9時には上がるはずだ、明日は3本滝でも見るか、と思いながら一日を終える。しかし乗鞍岳はいい山だった、生き物が良くて高山の景観がいい。
空の動きを見、風を感じながら自然の中を歩く、そんな生き方が何か合っている様に思えている、年を経てくると楽に生きていけるやり方が自然に掘り出されてくるようだ。また山に登るか。
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