787とF35と遅れてばかりの航空機開発が
このところ航空機の開発が遅れる話がやたらと多い。昔から新しい航空機の開発は予定通りにはいかないことは多々あったがこのところのボーイング787やエアバスA380の遅 れは新しい時代の影の切り口を見せているようで興味深い。787は当初の予定より最初の顧客である全日空への引渡し予定が既に3年遅れてまだできず飛行試験が続いている、ここへきて電源系統パネルから飛行中に出火し(それも米連邦航空局:FAA のパイロットによる検査飛行の最中に)既に1ヶ月飛行試験が止まっている、新たなスケジュールの公表すらまだない。電源パネルに何か金属片のような異物が付着したのではないかとの説明がボーイングからなされているが今ひとつしっくりしない。主要構造を大型旅客機としては初めてカーボンの複合材製とし、系統もオールエレキに近い斬新なシステムで 更に開発製造もこれまで以上に全世界のサブコントラクタに分散するという新しい手法だらけの機体だが、ボーイングなら何とかできるだろうと世界中のエアラインから15兆円にものぼる空前の受注を集めていた。複合材といっても接合部には金属を使用せねばならない部分がどうしても出来てここに熱膨張率の低い(複合材は殆ど熱膨張しない)チタンを多用することになるが、この部分を接合する特殊なファスナーボルトの製造が全く間に合わず機体の組み立てが大幅に遅れた、こんなことから始まって、落雷対策で(複合材は電気を通さない)雷の通り道をつけるメタルバリアを構造のそこここに張り巡らす改修や 強度不足の露呈やエンジンのタービンの破裂と次々に問題が起ってここに至っている。新しいものを取り込みすぎたとの感じがしてならない。工業製品は加速度的に複雑化している、恐らくそれはコンピュータ利用の設計が高度になってできることが増えぎりぎりまで攻めることができるようになったその結果なのだろう、掛け算ではなくべき乗で複雑化が進んでいる気がする。エアラインは遅れを見ながら路線計画を次々に変更したり別の機材を急遽発注したりで、もううんざりしている、勿論多額の補償要求がボーイングに出ている。大変だ。
ミリタリーの分野でも世界の戦闘機の次の主役を約束されている米国ロッキードのF-35戦闘機の開発もなにやかやと遅れている、コストも膨らみ遂に海兵隊が使う予定の垂直着陸型F35Bの開発をキャンセルしてはとの提言がこの11月に大統領付きの委員会から出されるに及んでいる。大騒ぎだ。この機体もステルスはあり、垂直着陸はでき、勿論超音速で飛べ、最新の電子機器は搭載、大量生産でコストも抑える、と何でも取り入れた機体だが、やりすぎたようで無理がでたようにみえる。遅れが出ているため米国の戦闘機が必要な数に不足する事態が目の前にあり急遽F16の延命のための疲労試験が行われつつある。
こんなことと世の中で鬱病が広がっていることはどこかでつながっているような気がしている。出来るはず、と思って次々に背負い込むとそうは行かない、以前より何十倍も複雑な世界が展開していて個人の努力では破綻をとても支えられない。
ここらで一休みとの気もするが元気で八方破れの中国が力を増してきているとそうにも行かないように思える。後は中国の不動産バブルが崩壊するのを待つほか無いのかもしれない。まもなく、だろうか。
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