地球の一体感
気象の集まりがあるというので久し振りに出かけてみる、とても寒い日だ。エルニーニョの発見に至る歴史の話があってこれが結構面白く話してくれた田家康氏の著書を買って読んでい
る。「世界史を変えた異常気象」という本だ、どうにも題名が気に入らない、異常気象という言葉が受けると出版社は思っているようだがエルニーニョは異常とまではいえない。しかし中身はいい、丹念に文献を引用していく、こんな本は自分には書けないと思ってしまう。インカがスペインの探検隊といってもいいほどの僅かな軍勢にあっさり征服されてしまうあたりは気象の話のからみとは別に人間臭さに面白いところがある、しかし勝手なものだ、狙いは金銀の収奪だけだ、違う世界に住んでいる言葉も宗教も違う認識の共有できない人々から簒奪することには何の罪悪感も無かったのだろう。以前スペインのセビリア大聖堂にある黄金の祭壇を見たことがある、3トンもあるこの黄金は全てインカから運ばれたものだった、宗教は時に恐ろしいことをしでかす。本題の気象の話としてはたまたまエルニーニョだったためにペルー沖の北向きのペルー海流と風が弱くスペインのピサロ他はパナマ地峡から南下してあっさりペルーに到着できた、そうでなければこんなことは起こらなかったかもしれないという分析だ。他にも色々知らなかった話が出てくる。
今年の寒さの一因はエルニーニョが腰砕けになってしまったためともいわれているが ペルー沖の海水温の変化が地球全体の気候を表す見事な指標になっているという事実は地球が一体であることを如実に現している様に思えて感じるところがある。地球を巡る風にも海流にも国境は勿論関係ない、エルニーニョのような世界規模の現象の認識を世界の普通の人々が共有し始める、そんなことが何かへ向かう小さな一歩になるのではないかとも思っている。
先週末日光彫講座の帰りに日光二荒山神社に寄ってみたが寒く雪道で滑りやすいのにもかかわらず観光客の姿が目に付いていた。話している言葉が流れてくると、日本語ではない、中国語のようだ、そういえば春節の時期だった。楽しげに写真を撮りあっている若いカップルをみていると中国だろうが日本だろうが変わるところはない、移動の自由を手に入れれば人は地球上に拡散するように動き回りまじりあっていくのだろう、栃木の片隅にいても世界の風が当たり前のように吹いてくる。
地球の一体感。いつかは本当に国境のない世界が実現するのだろうか、切れ切れではあるが次第にそこへ向かって動いていっているような気がしている、いつかはたどり着けるのだろう。
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