ス-パージェット100の墜落
ロシアの航空界の期待の星、スホーイ・ス-パージェット100(SSJ100)がインドネシアのジャカルタ南
方の山腹に墜落した。5月9日現地時間14時50分頃(0750GMT頃)だ。販売のための
デモ飛行中で45名の乗員乗客は全員死亡した。交信記録からは10000フィートから6000フィートに降下しようとしてその途中で交信が途絶えているが、飛行していた付近の
山の高さは7000フィートほどであり6000フィートまでの降下は無理があったのではないかとも思える。降下申請はまだ平地上空を飛行中のときに出されており
管制もこれを許可した。当時の気象は曇りで山地には雲がかぶっている。恐らく雲中で山に当たったのだろう。それにしても対地の警報が鳴るはずだ、何か普通でないことが起こっていたとも思える。次第に状況が伝えられてくると、パイロットは飛行時間10000時間といわれる超ベテランのテストパイロットでスーパージェット100の初飛行を行ったまさ
にそのパイロットだったという。運動性にも優れているとの印象を与えようと意図的に対地警報装置を
切って山に近づいたらしい、事故フライトはこの日の2回目の飛行だが1回目に乗った人が撮った飛行中のコクピットの写真では確かに切れているという。
フライトレコーダやボイスレコーダが不完全ながらも回収されており追って原因がわかってこようが、それにしてもロシアが西欧の基準で開発した殆ど最初の旅客機でありこれからロシアの民間航空機産業を推し進めようとしていたその先頭になっていた機体の墜落だけにロシア側の衝撃は大きいものと推察される。
南国特有の高温多湿の不安定な天気だったとようで、デモ飛行で能力を誇示するにはあまりいい条件ではない、気象条件が悪くなりだしたが操縦に自信があったことから雲中に入りながら計画通り際どい飛行したのだろうと推測される。山腹の急斜面に残された衝突跡からは右に急旋回を切って何とか衝突を逃れようとしたがかなわなかった様子が伺える。当日の1回目に乗った乗客からはマニューバ能力の素晴らしさが感じられたとの感想が語られており、大きな運動を伴った飛行を当初から計画していたものと推察される。機体そのものに何か欠陥があったようにはみえない。ロシアの航空界の今後がこの機体の販売が伸びていくかにかかっているように思われ恐らく大統領をはじめとする上層部の期待も強く感じて、開発に深く関わっていたパイロットだけにそれに応うべく技量の最大限まで見せようとしたのではないだろうか。
飛行機そのものは良いような印象があるが、製造は順調な立ち上がりとは言えずまだ初期的なトラブルも出ているようだ。旅客機ビジネスは本当に難しい。この躓きはプログラム自体の存亡に関わっているようにも見える。旅客機市場は世界でメーカー4社が殆ど全てで、この70-90席クラスは更にそのうちの2社しか生き残っていない市場だ、そこへ割って入ろうとしたロシアの意気込みとその落胆はどうしようもなく響いてくる。頑張れ負けるな、と声をかけたくなる。センチメントではどうしようもできないビジネスであることは解っているのだが。難しい。
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