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2012年9月 7日 (金)

デレチョという気象現象が

デレチョ(Derecho)という気象現象が少し気になっている。
米国で開発が進められている新航空管制システムNEXTGENが完成すれば 気象情報を適切に共有でき 6月29日に発生したデレチョのような過激な気象も含めて気象による航空交通への年間270億ドルにも及ぶ損害の2/3は回避できることになるだろう、との記事にたまたま行き当たったことがきっかけだ。NEXTGENがそんなにうまく機能するだろうか、そもそもデレチョとは何か。少し調べてみる。デレチョという言い方は米国特有の表現のようだ。レーダーエコーで発達したボウエコー(弓状エコー)を米国ではこう呼ぶとwikipediaにある。発達した積乱雲Derecho が弓状になってレーダーエコーに特徴的な形を現していることになる。幾つかのサイトを読んでいくと次第に分かってくる。
年に1-2回発生するだけと記されており最近では6月29日夜にワシントンDCを駆け抜けた。ワシントンDCダレス空港の6月29日のMETARデータを読み出してみる。ひとことでいえば巨大な雷雲前線といっていい。五大湖南の内陸部Derecho2 で発生して一気に東海岸まで走り抜ける。雷雲前線の背後で起こるダウンバーストによる強風がものすごく 渦をまかないハリケーンという表現もあるくらいだ。この日は平均で22m/s、ガスト(瞬間最大)で31.4m/sまで吹いている。ダウンバーストに押されるように雷雲前線は東に駆け抜ける。すぐ北側をジェット気流が東西に走っており 上層の気流に近い速度でダウンバーストの風が雷雲前線を押すことによって低層から高層までの循環パターンを保ったまま東に走り抜けるようだ。この日は非常に暑い日でワシントンでは日中40℃にも達していた。北の大気との境界となるカナダ国境線付近で積乱雲が巨大に成長しジェット気流のラインに沿って走り始めている。GPV予測では雷雲の可能性を示すショワルター指数は-4.0とボーダーであるゼロを大きく割り込んでいる、宇都宮辺りでも-3を下回る数字は見たことがない。強度の不安定だ。
3日前の宇都宮の雷雲前線と較べるとその強さは際立っている。宇都宮の雷雲前線はやはり通過と共に気圧がやや上がり強風が吹き出しているがワシントンの場合より気圧の上がり方は1/5位で風も瞬間最大で15m/sほどだ、風のエネルギーでは4-5倍違う。雨が強いのが宇都宮の特徴だがダウンバーストが強いと雨どころではないのかもしれない。こんなのが通れば航空網は大混乱になる、飛ぶに飛べず降りるに降りれずとなる。
アメリカの気象はマクロは単純なところがあるがローカルには竜巻といいデレチョといい とんでもないことが起こっているようだ。自分の身は自分で守るしかない、いざというときは誰にも頼ることはできない、そんな精神もこの風土から生まれてくるのだろうか、アメリカを形作る精神も結局は地球に支配されているのだろうか、色々考えてしまう。

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