787のトラブルが収まらない
787のトラブルが収まらない。いくつかトラブルが続いたがバッテリーの火災は深刻なものが感じられて飛行停止となった。電気系統はどうなっていたんだっけとネットで少し調べてみる。問題はバッテリーを含む電源回路なのかバッテリーそのものなのかというのが最初の疑問になる。
787は燃料消費の少ない機体であることが最大のポイントでこれまでの機体のようにエンジンの圧縮空気(抽気)を抜いて機器を駆動したり与圧に使ったりはしていない。エンジンの効率をフルに生かした エンジンから抽気を抜かないジェット旅客機というのが大きな技術的アドバーンスになっている。これで20%の燃費改善のうちの3%分を得ている計算になるという。エンジン出力を電気に変えて各機器を動かしており、通常の機体の2倍の発電機をエンジンとAPUが駆動して電気を作っていて、総電力は1.3メガワットにもなる。このバックアップに電池が必要になるのだが当然負荷が高く 高効率の電池が求められてリチウムイオン電池の採用となった。同じサイズのニッカド電池の2倍の容量が得られるという。787搭載のユアサのバッテリーは酸化コバルトの使用でエネルギー密度が高いといわれ安全性の試験も十分に行われたといわれるがこの事態だ。787にはこ
の63lbs(28.5kg)のバッテリーが前方と後方に1個づつ積まれているが、ボストン空港で出火したのは後方バッテリーで、APUを起動するのがその役目となっている。ボストン空港着陸後25分で出火していることからエンジン停止後APUを起動した直後に出火したとみられる。高松空港に緊急着陸した機体は前方のバッテリで離陸後まもなく出火している。こちらのバッテリーはシステムのバックアップが主要な役割となる。バッテリーの電力を使用するフェーズとは思えず過充電状態になっていたのではないかと推察される。バッテリー自体の保護回路と電源システムの両方が疑われるが、ボストンでの出火ではバッテリーは過充電状態になっていないデータが出ていると伝えられ、バッテリーそのものが疑われている状況にある。未だ2つのトラブルの共通の原因には到達しきっていないようだが結局はバッテリーにも電源システム側にも何らかの安全対策が施されることになって行くことになり、飛行再開までには相当の期間が必要となろう。
この他の燃料バルブの誤作動や風防ガラスのヒビのトラブルも対処は簡単でもないように見えるが、この間に解決されていくとみられる。バッテリーのトラブルも含めて初期故障といっても間違いではないが設計の狙いに関わるだけに深刻な状況のように感じられる。
今年夏に初飛行予定のエアバスA350はどうなるだろうか、先進的なシステムの航空機で同様にリチウムイオン電池を使っている。787の事態をみながら少しはましな対応ができるようになるだろうか。
こうやって前に進んでいく。先進的な機体でこれまでにない遅れとトラブルが続くという現実は 次第に前に進むのが容易ではなくなってきていると感じさせる。次の量子的ジャンプが出現するまで壁のようなものを感じながら進んでいくのだろうか。人類にとって時はまだ十分にある、後戻りさえしなければそれで十分なのかもしれない。
| 固定リンク
コメント