ヨットを始める、その2
ヨットを始めてみるとこれを廻る幾つかの小さな驚きの連鎖に遭遇する、前回に続けてヨットにまつわる話だ。
ヨットは風任せで気象が随分と気になる、細かい風の具合と共に波がどの程度になるか予測したくなる。確か何かの計算式があったはずと気象予報士試験の受験勉強の時に集めた本を見直してみると出てきた、風速と吹送距離から風による波高と周期を求める経験式―Wilson公式だ。
気象の参考書の式は記述におかしいところがあり誤植があるようなのでネットでこのWilson公式を調べていくと土木学会の論文に行き当たった。これは信頼できるようだ(添付)。建造物の波浪による環境推定にはこの式を使っているらしい、便利な式はあちこちで使われる。波高は有義波高という定義で一定時間の波の高さを高さの順に並べて上から1/3をとりこれを平均した値で実際の波の状態を表すのに適しているとしてしばしば用いられる。周期はこの波高の波の周期とな
る。式の単位はmで揃えて計算する。どのくらいこれは当たるのだろうかとまたネットで探していくとなんと博多湾で実際に計測したデータのレポートに行き当たる。真面目に調べる気になれば次々にレポートが見れる、便利な時代になった、技術の進歩は加速的になるというものだ。このレポートによれば実際に計測すると推算値よりもやや低めの値を示した、また福岡の気象台の風速計測値は博多湾上のものとおよそ一致したともある、これは有用だ、次々に見つかりちょっとした驚きでもある。早速ダウンロードした気象データ(MSMデータ)から切り出して表示するエクセルファイルに式を埋め込む。湾内の波はこれで推算でき、外洋のうねりも広い範囲の風速と凡その吹送距離からだいたいの値は推算できる。波の速度はどうだろうかと気になってこちらも調べていくと浅い流れの式と深い流れの式が程なく見つかる。浅い流れは以前浅底水槽をいじっていた時におなじみだ、思い出した。深い流れの波の速度は周期に比例する簡単な式(速度(m/s)=周期(sec)*1.56)にたどりつく、なーんだそうかという気になる。しかけが大体解ってきた。
気象のMSMデータも最近33時間予測が39時間予測まで予測時間が先に延びたのでこれも取り込めるよう処理プログラムやエクセルファイルを修正して動かし始める。その日の早朝にデータを切り出すと大体2日分の予測ができる。GSMは11日先まで出るが気になるのは細かい風なのでメッシュの細かいMSMデータにどうしても頼ることになる。1mくらいの微風だと波高は0.05mとの推算が出る、実際に海に出てみるとまさしくこんなものだ、大体当たるようだ。
気象予測はこれで暫くやってみるが、揃える物は他にも色々ある。着るものは風から保護でき日焼けから保護できるラッシュガードを着ればいいらしいとネットで解りこれも発注する、クラブで聞くと長年やっている人が多くそれぞれにやり方があるようでネットで調べるのが今様だ。使ってみると日焼け防止には頗る強力だ。
靴はデッキシューズというものをネットで買って使ってみたがひどい靴擦れに見舞われる、ごわごわして足に合いにくいのもあるが元来クルーザー向けでディンギーでは使わないものらしい。ベテランの人の靴は大体がブーツのような靴だ、聞けば夏は暑いので透けた軽いものがいいという、試しに買った似たような靴があったので見せるとこれで十分となる、少なくも夏はこれでやれそうだ。
あと
はカメラだ。丁度今使っているcoolpixの動きが渋くなり買い替え時だと思っていたところで迷わず防水5mの新しいものに変える。CoolpixS31、1万円弱で安い、程なく送られてきて使い始めるが思いの外良く撮れる、これもデフレだ。少しずつ揃えていくが夏は少なくともあまり高いものは買わなくて良いようだ、ちょっと安心する。
道具立てが揃ってくると次第にやる気も出てくる、最初はちょとくらい齧ってみるかとの軽さだったが次第にはまりこんでくる、流れに任せるように動いていく時間と空間ともろもろが、好ましくもある。物理学でないこのもろもろがダークマターなのだろうか、そんなことすら考えてしまう。今年も夏は始まったようだ。
| 固定リンク
コメント