アシアナ航空の事故が考えさせられて
アシアナ航空がサンフランシスコ空港で着陸に失敗、炎上してもう2週間以上たった。(添付写真はwikipediaより)。
事故がおきたのは2013.7.6
18:28(グリニッチ時)(11:28
現地時間)で 米国サンフランシスコ空港滑走路28端 で発生した。機体はAsiana航空のボーイング777-28EER、エンジンは
P&W4090、天気は特に問題となるところは無く緩い左横風、視程は10マイル以上で良好だった。
まだ事故原因の説明がないのは慎重な対応のような気がしているが、まあこんなものだろう。今までに明らかにされている事実からは、最終的にはバイロツトミスだが、単にパイロット個人に問題があったかというと、そうは言い切れないように思える、他のパイロットであれば何の問題もなかったかというとそうでもなさそうだ。これまでに明らかになった限りでは、機体に問題は見出されていない、気象条件はどうみても良好なコンディションだった、パイロットはコクピット内に3人もいて操縦していたのは1万時間のベテラン、777への機種転換中とはいえルールに従ったやり方で操縦を担当しており、逸脱は無い。滑走路のILS(計器進入システム)が工事中で作動していないが、ILSのない滑走路は幾らでもありパイロットの資格があってILS無しの滑走路へアプローチができないということは到底考えられない。要するになんら問題が無いところで起こった大事故だったというところに今回の事故の最大の問題があると考えられる。どこかにシステム上の問題があるということになる。
事故の経緯を追うと、滑走路のILSが工事中で目視による着陸進入となったためかオートパイロットは高度1600ftで切られてマニュアル操縦でアプローチしている。ILS無しではPAPIという支援装置の4つのランブの見えかたで進入角度を判断する。赤が3つ以上見えればパスが低過ぎ、白2つ赤2つがみえれば丁度いい角度ということになる。バックサイドコントロール(操縦桿を引き迎角を増やせば却って沈下が増える)となる進入フェーズではエンジンパワーでパスをコントロールし速度の変動を操縦桿でおさえるのが原理的には正しいのだが、このフライトでは速度の維持はオートスロットルに任せて操縦桿でパスを間接的にコントロールしようとした、オートスロットルが機能すれば実用上は特に異常な操作というわけでもない。ところがオートスロットルが思ったようには働かず、最後にパスが低くくなったのをパイロットは操縦桿を引くだけで回復させようとして速度は急に減少し沈下が更に増えて失速に近い状態で滑走路端のコンクリートの出っ張りに主脚と尾部をぶつけ、滑走路に滑り込んだとみられる。
何故オートスロットルが思うように働かなかったのか、何かのタイミング(たとえばオートパイロットオフのタイミング)でミスでオートスロットルを切りパワーが上がらないのをみて急遽オンにしたのが間に合わなかったかもしれない、またはフライトモードの設定をFLCH(flight level change)として滑走路高度にレベルオフするような設定にしていたのかもしれない、このモードでは失速に接近しない限りレベルオフするまでオートスロットルは効かずこの場合ではエンジンアイドルのままとなる、いずれにせよパワーがアイドルから僅かばかり増え始めたのは激突8秒前、高度125ft速度112ktでもう後が無かった、この時でもパイロットは機首上げを続けていたため間もなく失速状態に陥り事故となったとみられる。
ミスがあったとすればほんの最後のところだけだが、これだけのことで大事故に至るのを防げなかったシステム全体の脆弱性に問題があるといわざるを得ないように思える。ちょっとした思い違いが即大事故というのでは人に安全を頼りすぎている。1万時間ものベテランパイロットでも間違えうるというのでは乗客はたまらない。
クリティカルなフェーズではオートスロットルに頼らない教育を徹底するか、FLCHモードのようなモードを低高度では選択できないようにするか、その他調べていけばまだつぶすべきことが幾らも見つかるだろう、2重3重のガードをかませる必要があるようだ。
この事故では死亡した中国人の16歳の女の子一人は機外で駆けつけた緊急車両に引かれて死亡したことも米当局から明らかにされており、今後に課題を多く残す事故となったように思える。どうあれ事故の詳細をとにかく隠さずに明らかにする、その姿勢のみが未来に向かって前に進めることができるのだろう。どういう事故報告が今後出されていくだろうか。
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