原発事故についての特別講義
目を片目ずつ手術していて困るのは暫くクルマに乗れなくなってしまったことだ。勿論予想はしていてバスに乗って出かければいいやくらいに思っていた。現実にそうなるとバスで行けるところは知れている、思い付きでは動けない、気になるところへ思いついたら直ぐに出かけるクルマのある生活に慣れきっている自分を感じる。もう40年くらいそんな生活を続けている、そう簡単には変えられない。
テレビを見る時間がどうしても長くなる、この間パソコンをいじりながら放送大学をなんとなく流していたら福島の原発事故についての特別講義が始まった。最初が報道番組風だったのでよくあるドキュメンタリーの解説くらいかと思っていたらそうではない、事故がどういう具合に
起こってどこが壊れて行ったか、メルトダウン、水素爆発や各地の放射能の増え方はどう関連付けられるのかを実測に独自の推定や計算を交えて説明してくれる。こんなよく分かる解説は初めてだ。次第に引き込まれていく。講師は田辺という人だ、かなり詳しい。考えてみれば今まで見たテレビの原発事故の解説は公表された事実をテレビ局の責任であたりさわりなく取りまとめたものでこのようなシステム全体の進行を専門家の視点から説明者の責任において読み解かしてくれるものではなかった。放送大学では講師の考えで講義内容を自由に組み立てることができる、確かにこんな形なら思い切ったこともいえる。話は次第に核心に入る、今後どうすべきかというところだ、想定外の事態に対処できるほど原発はハード的にも運用システム的にもできていない、これではだめだ、原発はもうやめるべきだ、としている。正論だ。
原発再開の流れができかかっているところでのこのような主張が公共放送から流されるというのは新鮮なものがある。ヒステリックにあるいは情緒的に動く“反原発村”の声でないところに説得力がある。
放送大学の理事長が4代続いた文部官僚出身から3.11後に現在の元私学学長に代わったこともあるのかもしれない。放送大学は形としては国からの補助が多い私立大学となっている、大学としての自由度は制度的には維持された形となっているようだ。
録画もしていないのでネットで何か出ているかと調べたらもともと5月に放送された講義だった、講義のネット録画が http://vimeo.com/66684623 に残されていて早速ダウンロードした。ネット上では田辺氏の主張には“反原発村”からの批判もあったりして昔の新左翼の内ゲバ風のところが出てきたりもしている。そんな風景はまたかと思わせて嫌になるが、講義そのものは見直してみても立派だ。放送大学という仕組みを見直してしまった。
政治状況や感情に振り回されず事実と向き合う、これが基本なのだろう。こんな冷静な議論が尖閣や竹島や北方四島についてもなされていけば世界はもっと住みやすくなるかもしれない、そんな風にも思っている。
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