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2013年12月25日 (水)

奄美の旅(その2)

奄美の旅続き。嵐の初日は終わり2日目、この日の午前は金作原原生林をガイド付きで歩いて見ることにしていたが朝目覚めると激しい雨音がする。しかし前日の嵐の続きのような天気はホテルに迎えに来たガイドのクルマに乗る頃にはすっかり上がった。ある程度予想はしていたのだがこんな風にぴったり上がると有難いというより唖然としてしまう。

0map 金作原原生林はレンタカーで自分で走っていっても行けなくはないがガイド付きが極めて望ましいという書き込みをネットのあちこちで見かけてガイド付きにした。初めて来ると確かに不安を覚えそうな道ではあったが一度訪れてみると次はガイドは要らないかという感じだ、走れない山道でもない。名瀬から知名瀬トンネルを使って知名瀬の南に出、そこから知名瀬川ぞいの道を登っていく。山道で前日の嵐で木の枝がKinsakubr1 路面に散らばったりもしているが走れる。途中で停まって金作原の一帯を眺める。スダジイ のもこもこした森で沖縄のヤンバルの森に似ているようだ。上り詰め舗装が切れて少し走ったところで目的地到着となる。一台のクルマとすれ違うことも無かったがすれ違いは厄介そうな道だ。道が少し広くなっていて邪魔にならないところへクルマを停め後はT字路を南に折れて林道を歩く、この道は車両通行止めとなっていて遊歩道のように使われているようだ。
雨上がりで広葉樹のKinsakbr2緑が美しい。鳥の声は方々から聞こえる。ウグイスのような地鳴きが茂みからするがシジュウカラだろうとガイドが言う、こんなシジュウカラの地鳴きは聴いたことが無い、アマミシジュウカラなのだろうか。カケスのような鳴き声はルリカケスらしい、あちこちから声がするが姿は見えない。ヒカゲヘゴの群生が現れる、ヤンバルと似ているがこちらの方が背が高いし群生しているような気がして見ごたえがある。そのうち前方の道にアカヒゲが現れる。Hikagehgこれもヤンバルで見ていたのですぐにそれと分かるがここでは結構目にすることは少ないらしい、雨 上がりが良かったのだろうか。最後にオキナワウラジロガシの大木の元に案内される。これもヤンバルの森と同じだ。ヤンバルのほうは酸性の赤土が特徴的でこことは土が違うがその他は良く似た植生のようだ。ヤンバルの原生林は米軍の演習地になってむしろ破壊から守られたといわれるが、ここはアクセスが悪いために生き残ったのだろうか、それともハブが守ったのだろうか。
Photo 葉の大きなクワズイモや花と実がいいリュウキュウルリミノキがあちこちで目に付き、花が可憐なトクサランなど、この時期でも花がいい、サクラツツジのつぼみもかなり膨らんでいて間もなく開花しそうで冬でも華やかだ。この他太いツル性植物にランのような花も咲いており植物がとりわけ面白いところと感じる。確かにここは奄美の見るべきスポットのひとつだろう。
ホテルに戻り昼を食べてナイトツアーまでの間奄美の中南部をできるだけ見ようとレンタカーで走り出す。
Manglb まずはマングローブの森を見ようと住用町の道の駅にいってみる、カヌーが面白そうだが水 遊びには寒いしちょっと時間が無い。クルマで更に1-2分行ったところにあるマングローブ原生林の遊歩道を歩くことにする。水面近くまで階段を下りてやや進むとシロハラよりやや大きいくらいのきれいな鳥がさっと飛ぶ。一瞬でオオトラツグミと感じる、田中一村の絵にあったオオトラツグミとそっくりだ。飛んだ方向に遊歩道をゆっくり戻ると暗がりの倒木の上にとまっている。双眼鏡で落ち着いて見る。美しい。間違Aいなくオオトラツグミだ。写真にも一応写すが遠く暗く証拠写真くらいの映像しか撮れない。そうこうしているうちマングローブのほうへ飛び去ってしまった。美しい奄美の固有種の鳥に出会えたのだからこれだけでも来たかいもあったというものだ、勿論天然記念物だ。
マングローブの森ではシジュウカラやヤマガラにも出会うがいずれも本土のものとはどこか違う。アマミシジュウカラ、アマミヤマガラのようだ。アマミは見慣れた鳥でも亜種を作り出してしまう、それほど孤独な島なのだろうか。

南の山のほうにも行って見ようと湯湾岳をめざす、展望台が観光ガイドにも載っており行くのは容易だろうと走り始める。しばらく走って宇検村から湯湾岳への道を折れようとすると通行止めの看板が目に入る。何と言うことだ、最近の雨のせいだろうか、しかたがない。がっかりだ、あたりの海辺の道を鳥を探しながら走って引き返す、雨交じりになって風もありミサゴが居るくらいだ。夜のナイトツアー開始まで時間が余ってしまって住用の奄美アイランドに行ってみるがここも閉館でどうしようもない。後で調べると2010年の台風被害以来閉館しているという。どうにも奄美は難しい、よくよく調べておかねば現地では動きにくいように思える。
マングローブ茶屋で早めの夕食をとる。鶏飯丼というのが良さそうでこれにする、要するに鶏飯だが だし汁がかけてあって出来上がった状態になっているというだけだ。思ったより随分出てくるま131218ryukyukonoha3aで時間がかかるがそれだけあってかこれはおいしい。ポンカンまでもらって、近くのナイトツアー集合場所まで行く。

小雨の中ガイドの車に乗り換えて三太郎峠旧道の登りにかかる、雨の日は却って生き物が出やすいという。と 左に中くらいの鳥が横切り直ぐにリュウキュウコノハズクだとの声があがる、ライトで照らされたところに確かにコノハズクが見える、こんなにあっけなく鳥が出てくるのかと驚く。勿論ガイドは慣れていてどの辺に何が出そうか解っているようだが相手は野生だ、そんなにうまくは出てこないはずだ、確かに雨で条件はいいようだ。この後もリュウキュウコノハズクのメスが寄ってきたり、光に動かないリュウキュウキジバト、アマミハナサキガエルやアマミアカガエル等が次々に現れた後、道の先に石のようなアマミノクロウサギが見えてきた、クルマが近A_2 寄るとのんびりと道脇の藪に入っていく。こんな様子では当然絶滅危惧種にもなろうと思えるほどのおっとり感だ。そのうち道の左の斜面を駆け下りるものが目に入る、程なく道に尻尾の半分白い茶色のネズミが出てくる、ケナガネズミだ、世界でも奄美から沖縄北部にかけてのみ生息しており国の天然記念物に指定されている。冬が繁殖期といわれ冬に動きが活発になるらしい。美しいアマミイシカワガエルにも出会え、夜の森の懐の深さも感じていく。夜は生き物は警戒心を薄めむしろ好奇心を表してくる、一方で人は警戒心を高める。昼間の人と生き物の立場が逆転しているようだ。奄美は夜が面白い。

3日目も雨模様だった。リュウキュウヨシゴイを期待して秋名を回るがアマサギが1羽のみ、そこから自然観察の森に上がり散策するも雨が降りかかり風も出て鳥見にはつらい。ルリカケスの声があちこちから聞こえる。姿を求めて歩き回るがついに現れない。しかし雨の中のOose 散策もそのままの自然らしくて悪くも無い。頃合を見て引き上げる。
西郷隆盛蟄居の地を眺めて空港へ向かうが正午発の飛行機の時間にはやや間がある、大 瀬海岸のシギ・チドリを楽しんだ後 気になっている重要文化財の泉家住宅がこのあたりにあるはずと探すが看板も無ければナビにもない、時間が迫ってきてこれもあきらめる。観光案内やパンフレットにもどこにも紹介されていない。重要文化財のありかを示す看板も無いとは、と思ってしまう。いったいどうなっているのだろうか、奄美唯一の国の重要文化財の建造物だ、国の決める価値基準なんかには重きを置かないという意思表示にも思えてくる。

奄美大島は不思議な島だった。何かに満ちている、日本人の起源にも関係している深い歴史を抱えている、不思議な動植物にも満ちている、価値がありすぎるのかもしれない、背負いきれないのかもしれない、不思議な島だ。

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