アルジェリア航空AH5017便の墜落
ウクライナの戦争はまだ終わりが見えない。ロシアが支えている限り戦争は続きそうに見える。不合理でも受け止めねばならない現実だ。
7月に続いた航空機墜落で気になっているのがアフリカ・マリの砂漠に墜落したアルジェリア航空AH5017便の事故だ。7月24日午前1時55分頃(UTC、現地時も同じ)にマリ南部の砂漠に墜落した。搭乗者116名は全員死亡、内フランス人が50人であったという、事故後フランス政府は喪に服しフランスの公共施設には半旗が掲げられた。
事故時機体は砂嵐の中にあったようで視界が得られないためコース変更の承認を求めて
いたといわれる。高度30000ft,約10000mで砂嵐に会うことなどあるのだろうか。遭遇したとしても視界だけの問題なら通常の雲中飛行と同じで普通に計器飛行できるはずだ。気象衛星データで見る限り、激しい嵐に遭遇していたことは事実のようだ(最初の添付図はBBCnewsより、その下はJAXAページより)。下層大気が強く熱せられて出来る積乱雲が主体の局地的現象のようでGSMの計算で
は予測できていない。真夜中にこんな積乱雲ができるというのもすごい。
フライトレコーダは回収されて解析できているがボイスレコーダは読めないようだ。録音そのものに失敗しているようだとの説明がなされている。
フライトレコーダによる事故解析を行っているフランスの事故調(BEA)から8月7日に現在の解析状況が公表されたがそれによれば ブルキナファソのワガドゥグー空港を離陸した事故機は上昇を終了して31000ft,280ktの巡航状態を2分間安定して続けたあと速度が明瞭に下がり始めて160ktまで減速、その後左ロールを続けながら急降下し地面激突に至った、となっている。
要するに失速してスピンに入り墜落したということになる。
砂塵嵐により砂塵を吸い込んだエンジンの出力が低下しこれに対して高度維持すべくオートパイロットが(或いはパイロットが)引き舵をとったため(それと気がつかないうちに)失速速度まで減速してしまいスピンに入ったというシナリオが考えられる。失速を防止するスティックプッシャーは効かなかったことになるが力任せに舵を引けばオーバーライドできてしまったのかもしれない、なにしろ地面に突っ込んでいくのはかなりの恐怖だ。気象とパイロットミスの複合が原因ということになる。似たような事故は2005年ベネズエラのMD82にも起こっている。
墜落した機体の運航はアルジェリア航空だがフライトクルーも含めてスペインのスイフトエアからリースを受けてのお任せスタイルの運行で運行会社に安全に対する切迫感が今一つ欠けていたのではないかとの気もする。嵐の接近はどう見ても地上レーダーで離陸前にはわかっていたはずだ。スイフトエアは低賃金でパイロット組合から抗議が起こっていたとも伝えられる、パイロットが安全重視で運行できる体制にはなかったのかもしれない。運行体制も含めたインフラが需要についていっていな
いところで起こった事故のように感じられる。
ブルキナファソとは聞かない名前の国だが1960年にオートボルタとしてフランスから独立した国だ、建国以来クーデターでしか政権移行が行われていないが最後の1987年のクーデターで憲法改正し直接選挙の大統領制がしかれて安定してきている。北のマリではアルカイダ系イスラム過激派のAQIMが一時は国土の60%を支配、現在もフランス軍との戦闘が続いている。昨年1月にはマリの北のアルジェリアでAQIMが天然ガス施設を攻撃、日本商社も被害にあったことは記憶に新しい。法による秩序の維持が弱まっている地帯との感じがしている。
ともかくマレーシア航空機の撃墜、台湾でのATR72の墜落に続いての事故だ。世界の航空機運行で安全対策が講じられ続けて事故が減ってきていたのを一気に覆した感があってこぼれ落ちるようなところで事故が続いている。戦争があろうと手に負えない気象状況だろうと事業のためには飛ばしてしまう、これが本日現在の世界の実像なのだろう、受け入れねばならない現実なのだろう。
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