風師山と旧伊藤伝右衛門邸に戦前の勢いを感じながら
9月がおわろうとしている、9月はなんだか短い、夏が終わったと思っているうちに9月はもう無くなってしまう。
九月のうちにやってしまおうと思っていたことを潰しにかかる。一つは鳥の渡りのポイントとし
て是非訪れてみるべきだと佐世保の烏帽子岳で出会った人に勧められていた風師山に行ってみることだ。ハチクマをはじめとする秋の渡りルートの隘路が関門海峡でありここを見るに最もいい位置にあるのが風師山だ。この金曜日、晴れると思ってはいたが思った以上によく晴れた、こんな日には家に閉じこもっていることはないと出かけた。
門司港駅あたりから山登りの道に入る、急で広くない、離合は道幅のあるところでないとできない。不安な道を上り詰めると展望台のようなところに出て車が10台くらい駐められる、空いているところに停めて後は稜線歩きだ。しばらく行くと左-風師山・直進-展望広場の道標が現れる。もう十分な標高になっているので鷹見であれば展望広場かも知れないと直進する。正解だった。数分の短い登りでピークに到達、鷹の渡りウオッチングをしている人達が見えてくる。3角点はないが、風師山の山頂の標高より2m高い標高と風頭山の名とを記した杭が立っている。双耳峰のもうひとつのピークということらしい。
大型船の行き交う関門海峡を一望に出来、眼下に巌流島を
望む。素晴らしくも眺めのいいところだ。鷹見のポイントとしては申し分ない、鷹が来なくても景色を眺めているだけで楽しい。時々ハチクマが現れる、あれっハチクマと違うと思う時は「チゴ!」との声が飛ぶ、ピンと尖った翼を伸ばしたチゴハヤブサも登場する。のんびり鷹を見るペースが丁度いい。登山家槙有恒もマナスルに初登頂した翌年にここを訪れたとの碑が建っている、アイガーの麓で見た槙が寄贈した山小屋を思い起こしたりもする、アイガー北東山稜は槙の初登頂だ。カナディアンロッキーのマウントアルバータも槙らが初登頂したとある、カナディアンロッキーを訪れた時この山は見えなかったが勢いのある人だと思ってしまう。戦前の勢いがどこか伝わる。目の前の景色と幾つかの時の流れが交錯していい感じだ。
もういいか、という頃合で辞してもう一つの九月中に回っておきたい所へ向かう。飯塚の旧伊藤伝右衛門邸だ、9月中というのは勿論「花子とアン」が終わる前にということだが、この8月末に訪れたものの定休日で残念な思いをしたリベンジを片付けてしまいたいという気持ちもあっ
た。「花子とアン」の嘉納伝助のモデルが伊藤伝右衛門だ。
八幡インターで九州自動車道をおりて無料の高速道路のような国道200号線を南下すると程なく到着する。筑豊振興を目指したインフラ整備のこれもその一つだろうか、道はいい。
ウイークデイというのに入場者がひっきりなしで団体も次々に現れる。明治44年の白蓮との婚姻を機に整備された豪邸で庭は国の名勝にも指定されている。建物は大きく立派だがそれ程凝ったものでもないし庭もよく造られているが感動を与えるほどでもない。東京から遠く離れ今でも街外れのようなところ
にあるこの屋敷に白蓮が次第に耐え切れなくなったのもどこか解る気がする。
伊藤家は伝右衛門一代にして財を成したが伝右衛門の死後、石炭産業の凋落とともに勢いを失っていった。
結局は繁栄の残滓を眺めているだけだが物語がこの屋敷を巡って幾つも繰り広げられていったと思うと村岡花子のいう想像の翼が拡がっていくようで面白い。
9月はこうして10月へと転んでいく。一月一月まとめきれないような意味を抱えて過ぎ去っていく時が惜しい様でもあり楽し
くもある。ともかくこんな好天が続く九月も珍しい。
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