Indonesia-AirAsia 8501便の事故
また巡航中の事故だ。今年は比較的珍しい巡航中の旅客機の墜落事故が4件も発生した。Indonesia-AirAsiaはマレーシアの格安航空エアアジアの子会社だから今年の4件中3件の巡航中 墜落事故がマレーシアに本拠を置く航空会社の機体の事故ということになる。奇妙な巡り会わせだ。急成長しているだけに運航の仕方にどこかリスクを背負い易いのかもしれない。 前の2つマレーシア航空の事故がパイロットによる意図的と思われる墜落と地対空ミサイルによる撃墜という特異な事故だったのに対し今度は気象条件の絡んだいわば普通の事故のようだ。
今回の事故機となったエアバスA320-200は4年前に新製機としてエアバスからエアアジ
アに引き渡された機体でまだ新しくこの11月に定期メンテナンスが終わったばかりだった。整備不良等による機体のトラブルの可能性は低いように思われる。
パイロットはチーフは空軍出身の2万時間のベテランだがコパイはフランス国籍の2300時間の42才パイロットで技術者からパイロットに転じた人らしい。巡航に入った後操縦するのはコパイである可能性が高いためこのコパイの判断がどうであったかが一つのキーであるような気
がする。
機体は現地時間12月28日午前5時35分(22:35 UTC/2014/12/27)にジャワ島のSurabaya-Juanda Airportを離陸しシンガポールの Singapore-Changi International Airport に向かっていた(コース図はBBCより転載)。現地時間5時54分に巡航高度32000ftに達している。現地時間6時12分に雲を避けるために左への変針と38000ftへの上昇を管制に求めたが多数の機体が空域にあるため却下され管制は34000ftへの上昇をリコメンドしたらしい。その直後の6時18分に管制のスクリーンで機体が認識できなくなっている。
気象条件はコース上に雲頂が50000ft位の活発な積乱雲が多数あって(2番目の図、気象庁のTSAS図を転載)、また同じ空域には確かに8機の機体があったが事故機の高度はこのグループの最低の高度を飛行していた(3番目の図、reuter-straitstimesより転載)。
38000ftには後続の機体が迫っておりこの高度までの上昇が認められる状況ではなかったことは間違いないようだ。上空の風は熱帯ではジェット気流のような強い風の流れは無く積乱雲の誘起する風が吹いていたと推測される。
GSMの計算ではこの付近は38000ft以上なら上
昇気流は比較的穏やかになると予想されるので38000ftまでの上昇をリクエストしたこ
とも妥当のように見える。
拒絶されて止む無く機体は活発な積乱雲に近づいたが何故かこの時速度を落とした状態で雲に突っ込み失速・スピンに入って墜落したと予想される。地上からの観測では消失直前の対地速度がかなり遅かったとされている。
フライトレコーダが発見されればまた少し違ったシナリオもあろうがおよそはこのようなものであろう。
問題はこのようないつも活発な積乱雲が活動している空域に
多くの機体を飛ばし続けることにあるのではないだろうか。地球全体の衛星写真を毎日のように眺めているが赤道付近の雲の活発さは格別だ(4番目の図は12月18日に初めて公開された次期ひまわりの雲画像、やはり優勢な積乱雲の塊がこの空域にある。その下の図は12月27日23時UTCの世界雨画像、JAXA/GSMAPのページより転載)。
2009年大西洋で墜落したエールフランスのエアバスA330も赤道付近の活発な積乱雲に突っ込んだことが直接的原因だった。
またエアバスというのも何か関係があるのかもしれない。勿論機体は世界標準である米連邦航空局(FAA)の基準(レギュレーション)に合致して設計製造,されているが、このような地域では機体システムや運航方法にレギュレーションを越えた安全性が必要かもしれないとの気もする。
どのような調査結果となるだろうか、どのように今後に反映されるだろうか、興味はつきない。
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