ボルドー展
このところニュースではISISのテロ騒ぎが続く。ウクライナを巡ってはロシアと西欧の間も緊迫し、ギリシアの混乱も中々収束しない。ヨーロッパは危なくなっているのだろうか。
図書館に行ったついでに直ぐそばの博物館で開催されているボルドー展を訪れてみる。美術展のようだ、福岡の後は上野の西洋美術館で開催されることになっている。ボルドーと福岡市は姉妹都市でもあるからだろうかと思うが、これが中々面白い。
博物館なのに美術展とはいい加減なと思いながら見始めると最初に2万5000年前のレリーフが出てくる。ボルドー近くのローセル村で1911年に発見された「ローセルのヴィーナス」とも呼ばれる角笛を持った女性像だ。芸術的な雰囲気がある。直ぐ近くにはラスコー洞窟もあ
る場所だという。旧石器時代の芸術品は初めて見た。このようなものが直に見られるとは貴重な機会だ。帰って調べると女性が持っている角笛には正確に13本の溝が刻まれており、月齢のカレンダーではないかといわれているらしい。旧石器時代のアフリカの骨器のいくつかには13本または26本の線が発見されているという。芸術的でもあり伝えようとしている何かも持っている。このような展示から始まると確かに博物館でもおかしくない展示だと思えてくる。
ローマ時代のレリーフや壷なども展示されボルドーが思っていた以上に古い街だったことを感じさせる。次々に連綿と続く文化の歴史を明らかな証拠とともに見せつけてくる、これはかなわない。
進んでいくと晩年をボルドーで過ごしたゴヤの絵やボルドー生まれのルドンの絵と共にボルドー出身であるドラクロワの「ライオン狩り」の大きな絵が展示されている。動きに力がある。
重層な芸術文化の街だ。ボルドーと聞けばワイン畑位しか思い浮かばなかったわが身の浅薄さを思い知らされる。
勿論最後にはワイン文化の紹介もあり会場の外ではワインの即売も行われている。確かにこれは街そのものの展示会のようだ。
改めてヨーロッパ文明の奥の深さを見る思いがする。ローマ時代の日本といえばやっと稲作が始まった位だ、長い縄文時代の間にヨーロッパは随分先まで進んでしまっていた、その差を中世の停滞でやっとつめられた、そして現代で対等のように眺めあっている、そんな歴史が感じられてもくる。いい時代になった。いい展示会だった。
買って帰ったボルドーワインは久し振りにおいしい赤ワインにめぐり合った気がした。ボルドーに行ってみたくなる。
ISISのテロは、ウクライナはいつになったら収まるのだろうか。これも長い文明の歴史の一つの章か節なのだろうか、そうなのだろう、まだ始まりなのかもしれないが。
ぼんやりと未来に延びるこれからの長い時を思ってしまう。
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