平戸を旅する、その2
平戸への旅の印象をとりとめもなく書きたくなってしまう。
平戸には足を踏み入れたことが無く、九州に戻ってからは一度は行かねばと気になっていた。平戸には歴史の何かが詰め込まれているような気がしていた。何時の時期がいいのだろうかと思っていたらネットに平戸とひらめまつり開催中の文字との文字が並んでいてそうか今の季節がいいのか、と単純に宣伝に乗せられるように出かけた。ひらめづくしのコースのある宿を取りあえず予約して、回り方を調べ始める。かくれキリシタンの生月島にも行ってみたい、見るべきポイントが多い、これは忙しそうだ。
福岡から平戸への行き方も幾つかあるが九州道・長崎道回りは簡単だが距離が長くて高速を使っても早く着けないように思えて海岸沿いを走る唐津伊万里経由とした、高速代もこちらが随分安い。一般道が多くなるので3時間半位かかるだろうとの予測で計画する、結構時間が足りない。天気は都合がいい日で2日続けて晴れという平日が無く曇りでもいいかと日を決めるが間際になって弱い雨・風強しの予測に変わってくる、自然のことだ受け入れて荒れ模
様の空を楽しむしかなかろうと出かける。
走ってみると海岸沿いルートは西九州道の新たな区間が最近開通しており、県道297号線・伊万里大橋経由で伊万里市街地を通らずに平戸へ向かい渋滞も無く楽に走れた。2時間半で平戸大橋のたもとまで辿り着いたことになる、思いの他早い。長崎道周りよりも明らかに早くなる計算だ。時間に余裕が出来たのでゆっくり平戸を巡ることにする。
田平天主堂から廻り始める。世界遺産登録が目前の長崎キリスト教遺跡の一つとされていて重要文化財だ。見晴らしの
いい所にあって鉄川与助の設計で堂々としている。ステンドグラスも真新しい。続けて平戸大橋を渡り平戸市街地の見どころや島中央部の宝亀教会・巨大な紐差教会などを一渡り巡る。今につながる歴史の流れを感ずる。
時間に余裕があるので松浦史料博物館で教わった高倉健の遺作「あなた」のロケ地、薄香港も訪れてみる。
ナビに出てきた薄香の郵便局を目指して進むとあっけなく到着した。確かに映画で見たような景観だ。
埠頭にクルマを停めて少し歩く、古い町並みだ、昭和の街並みだ。よくこの場所
を見つけたと思う。フェリー乗り場の小さな建物が高倉健の記帳所になっていてロケ中の写真などの記念展示がしてある。映画のシーンと今の現場をあわせてみると面白い、変わらないところ変わったところあるが少なくとも路地裏の雰囲気は同じだ。映画の脚本が原作で、映画をもとに後で小説が書かれている、旅の到着点であるこの港町の映像のイメージが最初にあってストーリーが出来上がっていったのだろうか。
平戸には海外との関わりで歴史的な事件が幾つもある。
空海が中国に向けて出発したのも平戸、蒙古来襲では蒙古軍
が博多を攻める前に集結したのも平戸、アジアを荒らした倭寇の拠点のひとつだったのも平戸、ザビエルが日本での布教活動の拠点にしたのも平戸、清を倒して明を再興しようとした鄭成功が生まれたのも平戸、江戸時代初めまで南蛮貿易の中心だったのも平戸、カクレキリシタンの拠点も平戸、吉田松陰が滞在してアヘン戦争についても学んだのも平戸。。。。。
現地に立ってみると確かに島陰で波が穏やかな割りには外洋に直ぐ出れる、九州本土へ渡るのもたやすい、日本国から距離を置いて目立たないように何かを行うにはうってつけの場所のような気がする、水深もあるいい港も多い。
しかし「あなたへ」にはそんな歴史を動かす雰囲気はどこにもない。ただの港町のように見える。薄香港ばかりでなく平戸全体にどちらかというとこちらのほうが自然に入ってくる、歴史の重みはどこにも漂っていないように見える、歴史的遺物があちこちにあることの方にむしろ何か違和感を感じるほどだ。何なのだろうか。
歴史に幾重にも層をかぶせていくような、覆い隠そうという風土のようなものがあるのだろうか、人為的ではなく自然がそうさせているようにも感じる、そういう島かもしれない。
不思議な島だった、興味深い島だ、またこよう、でも五島に行くのが先かな、そんな風に思ってしまう そこがこの島の本質かもしれない。
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