春は大潮となって訪れる
春の大潮という言葉につられて有明海の干潟・大授搦(だいじゅがらみ)を訪れてみた。
「春の大潮」という響きには最も潮が大きくなるという意味合いがこめられているように感じる。
ところがネットで調べてみると春の大潮が潮位が特に大きくなるというのは一般には間違いで冬至か夏至が最大になるというのが理屈だという。月の赤緯が最大或いは最小になる冬至か夏至の頃が月の引力による潮位が最大ということらしい。
本当だろうかと具体的に有明海(住ノ江港)の潮位変化を調べてみると3月21日の春分頃の大潮が5.4m,12月24日の冬至頃の大潮は5.1m,6月17日の夏至頃の大潮でも5.1mだから、
有明海では逆に、流布されているように春の大潮の潮位が大きくなる。最大は秋で9月の終わり頃は5.8m位になりともかく理屈とは違うことになる。有明海という湾流がもたらしているのだろうか。(潮位の基準は平均的な大潮時の干潮を0mとしており場所により異なる、海図の0mとほぼ同じ)。
試しに対馬の厳原での大潮の潮位を調べると理屈どおり春分では低く、冬至や夏至で高い。そもそも有明海の5m、6mという潮位は通常とは思えない値だ。博多湾では最高が2.3m位だから倍以上ある。有明海の潮位は月の引力とは別のメカニズムもあるのだろう。
何でもきっちり調べたほうがいい、とりわけ鳥見にまつわる話はそう思っている。
3月7日に大授搦に訪れた時は春の大潮といってもまだ緩く潮は5m位だった。干潟が少し
残っていて近くに鳥が見える。みやすくていい。
例によってハマシギの大群が飛び回って干潟らしい雰囲気を出し、大型でおなかの白いダイシャクシギやおなかの茶色いホウロクシギも結構いる、大体が立ったまま嘴を羽にうずめて寝ている姿だ。のんびりしていて春らしい。忙しい動きはシロチドリくらいだ。昆虫のように早足で動き回っては干潟をつついている。クロツラヘラサギも20数羽いるがこちらも寝てばかりだ、もはや余り珍しいという感じがしない、九州の鳥に慣れてきたようだ。すこし後ろには美しいツクシガモが右から左まで連なってうごめいている、ざっと数えると1100羽位だ、こんな大群はは
じめて見る。
潮は見る見る引いて鳥がどんどん遠くなる。頃合かと引き上げる。大授搦の鳥見はテンポがよくて気持ちがいい。
時間はまだ十分あるので小城の牛尾神社の牛尾梅園に梅見に回る。
梅は今年は福岡城址の梅を見た、ここは美しく品がよい、庭の梅の雰囲気がある。マッシブな圧倒されるような梅の花に浸りたいとの思いが残っていた。ここ牛尾梅園は13000本といわれ、期待できそうだ。ナビに従って牛尾神社を目指すがこの時期神社の駐車場は催し物会場となりクロー
ズされている。麓の周回道路に路肩駐車して登っていく、小山全体が梅園となっていて丁度見頃だ。スローなペースで切れ間無く続く梅を見ながら登っていくと梅の香がほのかにして心地よい。
江戸時代からの梅園らしい、梅の実を取るための梅林のようで鍋島の殿様は色々知恵を尽くして収入を増やそうとしていたのが感じ取れる、陶磁器の生産にも力が入っていたし嬉野茶を輸出もしていた、干拓地造成もそうだ。品揃えを増やし売れるものを増産する、いつの時代も同じことの気がしてくる。
これでもかこれでもかの鳥を見梅を見る、もう春は疑いようも無く姿を現してきている。また巡る忙しい春に身構えることも無くなって、あるがままの春を楽しみたいと近頃はなかばあきらめたように春を待っている心の動きが面白くもある。
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