週末が忙しい
仕事を全て離れて自由な生活に入って感じることの一つに土日が忙しいということがある。「世の中」と漠然と表現してしまうのもアバウトだが、とにかく世の中は金曜夕刻から土日に行事を提供したがる、土日に遊ぶのが便利なように出来ていると感じる。平日に働く者中心の設定になるのはしかたがないといえばそうだが働かなくなってもこれ程週末に引きずられるとは思いの外だ。
コンサートや公共のイベントは大抵が金曜夕刻から土日だ、所属している趣味や遊びのグループの活動予定もヨットにしろ野鳥にしろ土日に設定されるし、少しまじめな気象に関わる会合も土日で、その他同窓会なども土日設定だ。旅行するにも高速道路は土日が割引があって安い、平日であれば少しは宿代が安くなるが道路代の割引はこれと同じかむしろ多いくらいで、結局平日の旅行は宿が取りやすい位が取り得ということになる。勢い土日は予定が重なりやすく悩ましいし忙しい思いをして、平日はのんびりするということになる、何だかアンバランスだ。
土日が稼ぎ時の 販売や遊戯施設で働く人はこんな思いをずっとしてきたのかとも思う。どこかいびつだ。昔初めて欧州に行った時に日曜は安息日だからデパートや多くの店は休みだといわれて唖然としたことがあったが、そういう感覚もおかしくもないと今は思えるようになった。同じ様に気付かずに人に無理を強いていることが沢山あるのかもしれない。
数日前の金曜の晩、アクロス福岡にオペラ見物に出かけた。DVDやWOWOWのメトロポリタン・ライブビューイングで色々見てはいるが、普通のオペラを舞台で見るのは初めてだ。昨
秋、コンサート形式のオペラ”ポッペアの戴冠”を観たが衣装は普段着でオペラ用の大道具は使われておらず、通常思うオペラとかなり趣が違っていた。
今回は”フィガロの結婚”でハンガリー国立歌劇場の来日公演だ。
遠い席で顔の表情は双眼鏡に頼らざらるを得ないが声はしっかり聞こえる、よくできたホールだ。有名な演目なのでDVDでも2回くらい観た覚えがあるが、目の前に生の芝居が展開されるとこんな動きをするんだと新鮮に思えるところが幾つもある、何よりオペラ歌手が舞台役者といっていいほどに表情や身振り豊かに芝居をする、その上どんな姿勢でもしっかりと歌声は響かせるのは一種の驚きだ。
伯爵夫人役のソプラノのアンドレア・ロストが看板となっているが他の面々も十分に達者で面白い。スザンナ役のシャーファールや伯爵役のハヤなどのうまさが心に残る。
しかし長い。3時間に及ぶ上演は集中が切れてくる、疲れてくる。3時間はオペラとしては普通なのだが観ると現実には体に来る。ポンテ作のこの芝居はストーリーの遊び多くてクライマックスがぼけてしまうようなところがあるのも疲れさせる一因だろうか。
フィガロの結婚の上演がフランス革命の引き金の一つとなったといわれるが、改めて生でみてみると本当だろうかと思ってしまう。貴族のこきおろしかたなど、当時の大衆の心に響くところが幾つも埋め込まれているのだろうがこの現代では響きが鈍くなってしまうようだ。メトロポリタンオペラでは時折時代設定を近代や現代に置き換えたオペラの上演が行われるが、そういう試みもしたくなるオペラの一つかもしれない。
時々生のオペラに触れるのは確かに刺激的だ。それにしても今回この出し物は東北関東を廻った後6月24日からは広島を皮切りに5日間毎日都市を変えて鹿児島から大阪までの西日本を廻っている、勿論大道具など一切合財が連日動き回ることになる、そんなことができるのはインフラのしっかりした日本だからなのだろう。いいビジネスかもしれないがここでも誰かに人知れず無理を強いているような気がしてどこかいびつな世の中なのかなとも思う。でもそんなものなのだろう、仕事を離れてのんびりに浸っているいる自分が緩くなってしまっているのだろう。
ともかく忙しい週末を受け入れてこれを楽しみながら過ごすことにももう大分なれてきたようだ。
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