青葉木菟アオバズク
夏場は平地では鳥見の楽しみは少ないが、7月の季節にはアオバズクが親子の姿で見られるとの情報が時々流れる。繁殖情報なのであまりおおっぴらにするべきものでもないが、毎年同じ場所で繰り返されるので、大体の場所が出ると、ああ あそこかとわかるようだ。
中には行政や神社のホームページで毎年5月頃からこの施設周辺ではアオバズクが見られますよ、と載せていたりもする。歴史的なものもあり一概に控えるべきとばかりも言えないようで微妙だ。
今年は福岡周辺の2箇所で見た。
一つは那珂川町の神社なのだが、非常に大きなクスノキがある。江戸時代の国学者 青柳種
信が纏めた『筑前国続風土記拾遣』には住吉神宮の元宮であると記されており、住吉神宮より更に古い歴史を持つ日本で最も古い神社の一つとされているようだ。
現在の社殿は江戸時代のもので驚くような古さはないが、境内の大楠は尋常でないほどの太い幹を持っている。確かに古い神社と思わせる。
アオバズクは直ぐに見つかり親鳥と幼鳥4羽、計6羽が枝の上で殆ど眠っているように動かない。幼鳥がしっかりしてくればもうここには居なくなるからこんな姿が見られるのは短い間だ。調査によれば親鳥が元気なうちは繰り返し毎年同じ場所に来るようだ、親鳥が倒れれば子の1カップルが生まれた場所に渡ってきて子育てをするのだろう。
ここに渡って来るアオバズクはもしかしたら途方も無く長い歴史を繰り返しているのかもしれない。神功皇后の言い伝えに現れる神社だから1700年くらいは遡るのだろうか。
もう1箇所、糸島のある博物館の駐車場近くにアオバズク一家がいるというのでそちらも見に行ってみる。ここも毎年飛来があるらしい。
こちらは親鳥に幼鳥3羽だ。
この博物館のある糸島には古代の魏志倭人伝の時代の王墓がいくつもあり、その意味ではこちらも恐ろしく古くから栄えた場所となっている。長い時間の経過でも安定した環境を保ち続けるところにアオバズクは飛来しているのではないか、そんな風にも思ってしまう。
呑気そうに見える姿にも連綿と過去につながる時間の糸をひっぱっているようで今風に言えば生きた世界遺産の構成要素ということになるのかもしれな
い。
ここで途絶えさせるわけには行かない。
見たり写真に撮ったり文を書いたりしていることが、繁殖行為に影響を与えることになるのではないか、そんな後ろめたさが常に伴う。認識が対象そのものを変える不確定性原理のようなところはどうしても避けられないのだろうか。
考えてみれば人間という好奇心に満ちた生物が示す行動も含めた全体が広い意味での生物の生態系かもしれない。鳥にせよ人にせよ所詮は地球にはりつくカビのようなものに過ぎないのだから。自然にふるまえばいいのだろう。
そう思いつつもどこか迷いながら夏は過ぎていく。
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