調布飛行場での墜落事故
調布飛行場から離陸したPiper Malibu Mirage PA-46-350P/JA4060が離陸直後に墜落した。
まだ解らないことは沢山あるが現在わかっていることを整理してみる。
当該機は2004年10月に札幌で着陸事故を起こしており、この際の事故報告書から、製造は1989年2月14日、製造番号4622011で現状では製造後27年たった比較的機齢の
高い機体とわかる。パイパーのこのシリーズはMalibuの310hpのエンジンをライカミングの350hpに積み替えたシリーズで1989年からリリースが始まったようだ。シリーズ初期
の機体と思われる。製造番号の最後の11から恐らく11号機と推測される。
この機体の性能はどうか。ビジネス機の性能諸元はBusiness&Commercial Aviationにて毎年纏められているものが業界標準として他機との比較に用いられるが、手元にある2003年版の比較表では、単発レシプロ機では最も重い最高位の機体で高馬力、高翼面荷重の機体となっている。
今回の事故でまず気になるのが重量だ。標準的な装備を付けた場合、運用時の空虚重量は3,121lbsで最大ランプ重量(離陸タクシー開始前の重量)は4,358lbsだから、搭載可能重量は燃料も含めて1,237lbsになみる。5人乗っているので一人手荷物込180lbs(約82kg)とすると900lbsで残り燃料は337lbsしか積めないことになる。この機体の燃料搭載可能量(満タン)は720lbsなので半分弱の燃料しか積めない計算になる。このようなことは少し大きいクラスのレシプロ機では一般におこりがちなことで常識外れの機体とは言えない。実際にこの重量の縛りを守って今回運行したのだろうか、というのが最初の疑問点だ。とても守っているようには思えない気がしている。満タンで重量過大で離陸したのではないか。
この機体のエンジンはライカミングのTIO-540-AE2Aというターボチャジー付きエンジンで、エンジンマニュアルやチャートはライカミング(今はコンチネンタルに買収されてその一部となっているが)のホームページに掲載されていて誰でも見ることができる。
これによれば、気温上昇による馬力低下は10度Fで1%とある。この日は恐らく35°F位標準温度より高かったと見られるから12hp位低い馬力しか出なかったと思われる。
ここからは想定だが、重量超過で馬力は低い、これでは離陸性能が厳しくなるとややエンジンの上限を超えた、例えばタービン入り口温度の上限値以上で離陸する等、限界を超えた使い方で離陸したことはある程度想定できる。短時間なら許容されるとの思惑が直ぐにエンジンの不調を招き出力の大幅な低下をもたらして墜落に至った可能性があるのではないかと想像される。
同乗者への約束があったのだろう、その義務感から無理な飛行に至ったのではないだろうか。
こんな事故が起こってしまうと調布飛行場の使用は難しいことになるだろう。
首都圏の民間飛行場を失わないためにも、はやく横田基地を返還してもらうというしかないのかもしれない。日本の中央に戦後70年たっても存在し続ける異常ともいえる横田管制区がこれを機会になくなることにでもつながればこの事故も少しは報われるかもしれない、そんな風にも思っている。
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