嵐の中軍艦島に向かう
軍艦島のバスツアーの広告が目にとまった、いつかは行くべきかと思っていた場所だ。福岡から日帰りでホテル昼食がついて一人1万円弱だ。車を走らせて2人で行くとした
場合の一人当たり費用とほぼ同じくらいで、悪くない。申し込むと天気が悪そうでも事実上日が変えられないのが難点だが、楽な魅力には勝てずエイッと申し込んだ。
当日が近づくにつれ土砂降りの嵐との見通しが強くなる、軍艦島を低気圧の真ん中と前線が通過する、これは船が出ないかもしれない、出ても上陸できないかもしれない、どうしたものかと悩ましいが行くかキャンセルしか選択は残されていない。キャンセルはつまらないから最悪は荒れた長崎の観光でもと腹をくくって出かける。当日朝の軍艦島直近のMSM予測値では雨は出航直前には収まり何とかなるが風は6-8mで上陸条件(5m以下)のクリアはかなり疑わしい天候見込みだった。
雨支度を整えて集合場所に向かうバスから降りるといきなり土砂降りの雨が来る。予想外だ、集合場所近くのコンビニでコーヒーを飲みながらのんびり待つ、こんな時の100円コーヒーの有難さは代えがたい。
それらしいバスが現れて駆け込むように乗り込む。乗ってしまえば土砂降りでもなんでも構わないのが気楽だ。途中2か所で参加者をピックアップしてほぼ満席となる、平日だけに女性が多い。
長崎市内に入る頃には雨はほとんど上がって、カステラ屋と昼食場所のホテルを訪れる。天気は予想と大分違うが、悪くない。
さていよいよ乗船となる頃また小雨が降り出した、気温はまだ高いままで風も大したことなく前線が通過した気配はない、これから荒れてくるのかと気になるが、出航してしまえばあとは船長の腕ということになろう。船は伊王島を過ぎて湾外に出るが波は大したことはない、まだ前線通過ということではないようだ、高島を経由して軍艦島に近づくが桟橋に先行する船が停泊していて接岸待ちとなる、1隻しか接岸できずスケジュールを組んで各クルーズ船が調整して使っているようだが着岸はできるだけ早く離岸はできるだけ遅くと各船が粘るようで仕方のないことなのだろう。
岸壁は浮桟橋ではないので潮位に応じて階段状になった高さの最も近いところに着けてタラップを渡す。入江になっているわけではないので確かに南東の風で海が荒れると着岸は難しい、というか危ない。着岸の頃には前線が通過しつつあったようで北西の方から波が寄せている、これなら大丈夫そうだ。
とにかく上陸できたがまた雨足がやや強くなる、カメラを構えて写真を何枚も撮るが水滴の映り込みやピント合わせはかなり疑わしい、落ち着いてみればすべて失敗ということもある。一応カメラ本体は防水仕様なのだがレンズにはそんな仕様は何もない、壊れて
もいいかと雨に晒しながら写す。遊歩道コースから眺めるだけだが、思った以上に破壊が進んでいる、波の力がすごいようだ、立派な防波堤もこの前の台風で一部が壊されている。防波堤を越えて入ってくる波の破壊力で壊されていくという。人が住まなくなって40年以上経つ都市はこうなるのかとも思わせる。人類が何らかの理由で死に絶えたらこういう景観になっていくのだろう。
乗船はタラップも外されて岸壁に船を直接押し付けて一人ひとり助けられながら乗船する。このほうがまだ安定す
るのだろう。
ともかくほぼ予定通り船は出航して長崎港に戻った。結構大変なツアーだ、長崎市がわざわざ条例で上陸条件を定めているのもうなずける気がする。
戻って予想した天気の推移がどう外れたか検証してみる。どうも低気圧の中心部が計算にはうまく乗っていないようで、台風に似て中心に大きな眼ができていたようだ、眼に相当する部分に入ると急に気圧が下がり雨が止んでいる。風もこの部分が通過する間はさほど上がっていな
い、予想ではこの間が最も風が強くなるとしていた。低気圧の中心部での信頼性は今一つのようだ。現在の数値予報の限界を見た思いがしてそれはそれで貴重な体験ができたようでもある。(当日14時の実際の雨分布観測値(上)と数値予測(下))
写真は恐れたいたように半分以上が失敗だった。しかし雨が降っても嵐になっても旅は面白い。むしろ嵐こそとい
うべきかもしれない。
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