イタリヤオペラを観る
福岡にも年2回くらいは海外からのオペラ公演があって、なるべく観るように心がけているが、少々値が張るのでいつも迷う。今回はイタリアの歌劇団によるプッチーニのラ・ボエームで、これはよかろうと出かけた。ローマ・イタリア歌劇団というスポレート歌劇場を中心に臨時編成された歌劇団で若い人が多いらしい。「ラ・ボエーム」は19世紀半ばのパリで青春を過ごすボヘミアンを描いたシンプルなプッチーニらしいストーリーで、特にイタリアでは人気の演目という、若い人が多いというのが丁度いいように思える。
例によって事前にビデオで予習する。今回はwowowで放送されたメトロポリタン・オペラ(MET)のライブビューの録画が手元にあったのでこれを見ておく。見たことのある簡単なストーリーなので直ぐに頭に入るがMETのはカフェシーンでは2階建ての建物を舞台に造っておりエキストラのような登場人物も随分いる、大掛かりだ。これをどうやって海外巡業の舞台に現出させるのだろうかとちょっと気になった。
主役のミミ役は福岡公演ではキアラ・イゾットン(31)という近年頭角を現してきたソプラノ歌手が務め、他の都市での公演ではカルメラ・レミージョ(43)という少しは名の通ったベテランがミミを務めるところもある。無論自分にとってどちらも初めて聞く名前でしっかりした歌い手ならどちらでもいいが、演目から若さのあるミミ役に期待していた。
当日、席は結構埋まっている、仕事帰りの姿もみられる。幕が開くと出だしから歌声が良く通り迫力がある。去年見たハンガリーの歌劇団のフィガロより一回り声量が豊かなように感じる、やはりイタリアだ。
ミミ役のキアラ・イゾットンも声を低めるところでも雰囲気を保ちながらよく声が出ていてさすがと思わせる
。いい歌い手だ。ムゼッタを演じるサブリナ・コルテーゼも印象的だ、全体に若さがみなぎっていて感じいい。
気になっていた2幕のカフェのシーンでは地元のNHK福岡児童合唱団が20人くらいの集団で子役として出演して衣装も19世紀のパリらしく歌い演じている、違和感なく上手だ。
勿論、イタリア歌劇団の大人の合唱団も10数人出ていて合わせてにぎやかな雰囲気をうまく醸し出している。こういう演出もあるのか、と思ってしまう。それにしても子供たちの練習はどうしたのだろうか、連日のように移動する巡業公演だから福岡での合同の舞台稽古は1回できたかどうかということだろうが、スムーズにオペラに溶け込んでいる。調べると巡る各都市で同じようにそれぞれの地元の児童合唱団が参加して演じることになっている。ちょっと驚く。
さすがに2階建ての舞台までは作れず段をつけて階上を表現しているが、地元の子供たちの出演でにぎやかさはMETの向こうを張っているような気さえする。舞台装置もミラノスカラ座の美術監督をしていたソルマーニの制作によるものでちょっといい。全体にオペラらしい舞台が巧みにできあがっているようだ、さすが本場イタリアというべきか。
三重から始まって北陸・九州・関西・中部・北陸・関東と巡って11公演を16日でこなすという強行日程だ。よくやれる。
それぞれの各地の都市にこれを支えうるオペラ人口があるということになる、何のかんの言っても日本もいい国になった、素直にそう思う。最近はこんな風に思うことが幾つも出てくるようになった気がしている。このままこの雰囲気が未来に向かって伸びて行き続ければいいのだが。どうなるだろうか。
ともかく梅雨は本番を迎え今朝は朝から雷だ。こんな季節は室内で音楽を楽しみながらゆったりと過ごす時間がいい。
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