ピケティの21世紀の資本
ピケティの21世紀の資本の市立図書館の貸出順番がやっと回ってきたので読んで
いる。申し込んでから1年半は経っている、あんまりだ。
もう流行は過ぎた感じもするが、流行作家ではあるまいし真実をついている本ならば1年半遅れでも十分面白いはずだ、と気を取り直して読んでいる。
600ページ位あって結構な厚みなので散文的なくどい感じのところは飛ばし読みする。なんだか思うところを書きたいように書いていて論文というようでもない。
しかしよく調べている、式がすんなりは頭に入らないし、何故というところが散文的なのでどうしても、そうかな?、と思ってしまうが、ほう、と思うところは幾つもあって刺激的ではある。
例えばアメリカ・イギリスなどでの格差社会の拡大の要因の一つに高額の役員報酬がある。これは結局は役員自身が株主や監査委員会を大変な努力をしていいくるめて報酬額を引き上げているのだが、累進税率の最高税率が非常に高い間は報酬の引き上げは収入増には殆ど意味がなかったのでそんな努力まではなされなかった。最高税率が1980年代以降急速に引き下げられるようになって、役員報酬の大幅に引き上げに努力が注がれ、高額報酬が実現する流れになったという。エッ、そういうことだったのかと思わせる。
調べると最高限界所得税率の低下とトップ1%の国民所得に占める割合の増加には明らかな相関があるという。何ということだろうか、お手盛りで格差拡大は進んでいたということだ。こういうことなら累進課税を強めることで少なくともこれ以上格差を拡大することは防げそうだという主張には賛同を覚える。
ともかく、GNPの成長率が低くなると資本を持つことによる利益の比重が大きくなって持てる者は益々相対的に豊かになって格差は広がる、というのが本書の主張の主な部分のようにみられるが、それを取り巻く世界経済の歴史的な解説あるいは現状の分析がなかなか面白い。各国の税務当局の統計値が使えるようになってこれを丹念に調べて数値的に主張を確かなものとしているところが説得力がある。
大体読み終えた。
市の図書館から借りた本は2週間で返却するが、放送大学の受講生ならこの本のように放送大学の図書館にある本はリモートで自宅のパソコン上で読めるし必要個所のコピーもパソコンで得られる。パソコンで厚い本を読むのはしんどいが本として大体読んでいれば読み直したり深読みするために本を買わなくても困らない。こんな時は放送大学の講座をを一つだけでも受講していれば色々メリットがあることを思い知らされる。便利な時代になった。
便利さをプロダクトの一つの指標にできるなら、また新しい経済学も立てうるのかもしれない、ふとそんなことを思った。パソコンで欲しいものが楽に買えるとか、コンビニが近くにあって日常の用はたいてい済んでしまう、とか、本が自由に読める、とかそんな風に生きていくのが楽だということそのものが資産の一つではないか、誰かがそれを巧妙に指標化し数値化すれば新たな価値の見方が広がるかもしれない。
豊かさとは何なのか、それに焦点を当てた経済学もあるのだろう、そんなことも思えてくる。色々思いが広がる。いい感触だ。
こんな風に思いが拡散していくような本はやはり面白い本といえるようだ。
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