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2017年2月 2日 (木)

ゾルゲ事件とトランプと

トランプの騒ぎで丁度読んでいた本が面白くも読めるようになった、こんなこともある。

Zoruge たまたま図書館で見つけた「ゾルゲ追跡」というドキュメンタリーが面白くてつい読み入ってしまった。ついでにゾルゲの骨を探し当ててこれを手厚く埋葬した愛人石井(三宅)華子の自伝も読んでいる。
ゾルゲは戦前の日本で活躍した筋金入りのソ連スパイだ。表はドイツ人ジャーナリストとして駐日ドイツ大使の信頼も極めて厚かったというスパイの中のスパイのような人だったようだ。昭和16年ソ連に 日本は南進する、ソ連とはことは構えないことを知らせ任務を完了した直ぐ後に日本の警察にとらえられ昭和19年に刑死している。
このドキュメントの印象的なのは、当時取り調べに当たった検察官に戦後インタビューするなど戦争を潜り抜けた関係者の証言を丹念に集めて事実を組み立てなおしているところにある。可成りの労作だ。

読んでいって心に残るのは色々あるが、やはりソ連のスパイ組織の巧みな偽装の様に驚かされる。潜入した社会の人々に厚く信頼され非常にしっかりとそのNzorge 社会に根付きつつ活動している。この伝統はプーチンにも伝わり現代社会の片隅に今も息づいているに違いないと思わさしめる。

ゾルゲは手法としては情報を得るための不正な手段は一切行わなかったと述解している。信用を得て有力な人へのコネクションを作りまたそのようなコネクションのある人物を引き込んで情報を集め、これを組み立てて事態の真実を見極め本国へ知らせていったようだ。
始めは十分な資金がソ連から送られてきていたが次第に細りそれぞれの稼いだお金をスパイ活動に注ぐことが求められるようにさえなったという。偽装のためスパイそれぞれはきちんとした仕事を持っており、それからの収入で生活そのものは安定していたようだ。ゾルゲは日本を理解するために日本書紀や源氏物語さえも読んでいた。驚くべき読書家で、スパイなどやらずも十分に人から尊敬を受ける人物だったようだ。

ソ連への情報伝達は小型無線機と中国など外へ出ての小包などの手渡しによっていた。無線機はグループの中で技術のあるスパイ クラウゼンが日本で部品を集め組み立て、暗号を用いて通信している。
日本人の主要協力者はアメリカ共産党に所属し帰国した画家・宮城、朝日新聞記者で近衛首相の信頼を得て内閣の嘱託にまでなった尾崎、などで、政府トップの情報を得られるコネクションを築いていた。近衛内閣のソ連とは戦わず南進するという方針に影響を与えたのではないかとも疑われている。
ソ連はこれを受けて極東に配置していた精鋭をドイツ戦に急遽回しこれでドイツを撃破できたといわれる。ナチス敗北の引き金を引いたのがゾルゲだったということすらできるのかもしれない。
1941年9月に宮城に協力していた協力者から組織が露見し一斉逮捕された。終戦まで生き残り進駐軍によって解放された主要メンバーはクラウゼン位であとは刑死または獄死した。クラウゼンはその後ソ連に逃れ最後はベルリンで没している。

ゾルゲ事件から離れてスパイについて少し調べると日本人で外国のスパイまたはその協力者として活動した人は名の通った人にも見受けられ、驚く。
戦後のスパイ活動に関与したものとして正力松太郎がCIAからポダムというコードネームを与えられていた協力者だった、野坂参三が長くソ連のスパイとして働いた(ソ連崩壊後に露見、日本共産党から除名処分)ことなどが知られている。

中国とは尖閣問題を機に日中が離反しているのも韓国の慰安婦問題に火がつけられて日韓がうまくいっていないのも考えてみれば急に立ち上がってきていて、それぞれどこかの国(米国?中国?ロシア?北朝鮮?)が意図的にそのように動いているのではないかと疑いたくなってくる。そんなことがあってもおかしくない。


社会は単純ではない。最も信頼できるとした人が実はそうではなかったということも十分ありうる。トランプ政権とロシアの接近、そこにはどのような活動が隠されているのだろうか。

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