ラスコーの世界巡回展示が
もう10年以上前の話だが宇都宮にいた頃 西武パルコで洋書の特価市があった折 洞窟壁画の写真が豊富にあるのが気に入ってラスコー洞窟の本を買っておいた、割安だったので何気なくというのがより正確だがとにかく”LASCAUX en Perigord Noir”というしっかりした本が手元にある。ぺリゴー ル・ノワール地区にあるラスコー というのがタイトルの意味だが、フランス語の本だ。但し解説文は英語とドイツ語、スペイン語が並べて書いてあって、各言語の表現が簡単に比較できる点でも面白い本だ。勿論図版は豊富にある、図版そのものについている説明はフランス語だけで少々残念だが全体としてそれなりに書いてあることはわかる面白い本だ。
暫くこんな本のことは忘れていたのだが、九州国立博物館でラスコー展が開かれているというので思い出して眺めてみた、なかなかいい、勿論展示はレプリカが主体だが立体的な姿が見れるようだ、とにかく展示を見てみようと出かけた。後で調べて解ったが、この展示会は2012年10月から始まった「ラスコー3」と称する世界巡回展示会であり、これまでに、ボルドー、シカゴ、ヒューストン、モントリオール、ブラッセル、パリ、ジュネーブ、韓国光明市、東京、仙台、そして福岡 とめぐってきた。2020年まではフランスに戻らないとされているが福岡の後は公表されていない。巡回に従って内容は充実してきているようで、ラスコーで発見された壁画の制作道具の展示は東京から加えられたとされているようだ。福岡だけの展示というのも結構あったりもする。
ともかく数年前の大英博物館の展示といい、全世界を巡回する世界的な展示会というのが目に付くようになってきた気がする。これもグローバリズムの一端だろうか。
展示の焦点は実物大の洞窟レプリカで、4か所分くらいあって、照明も工夫されていて洞窟の雰囲気がよく出ている。牛や馬の姿がリアルで、例えば竹原古墳の壁画などより遥かに生き生きしている。一朝一夕にはこうはかけない、描くこと専門の人がいた感じがする。同時に展示されている精巧な石器も国内で見るものより遥かに美しい。2万年くらい前の時代に美的感覚を持って絵が描かれ道具が作られていた、それがあからさまに解る。すごい。
この展示を世界巡回させたいという主催者側の気持ちには西洋文明の根源がここにあることを世界に誇りたいとの気持ちがあるのだろう、どうしてもそれを感じてしまう。
でもたかが2万年だ、せいぜい1000世代位前の先祖がなせる技だ、このままいけば人類はあと2万年位は軽く生存し続けるだろう、いやその何倍もの先の未来へ続いていくだろう、4次元の時空に生きる座標をまた感じてしまう。歳をとったのかもしれない、そう思いながら暑苦しくも楽しくもある現実世界へと会場を後にした。
| 固定リンク
コメント