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2017年11月16日 (木)

上野村ヘリ墜落事故

群馬県の上野村にヘリが墜落炎上し搭乗員4名全員が死亡した、というニュースが数日前流れて、引っかかっている。ヘリの事故は少ないとは言えないが大型のヘリで運航業界では大手といってもいい運航会社の事故だ。
もう一つ上野村といえばJALの悲惨な墜落事故のあった現場のはずだ。どうにも気になる。
事故の原因は11月15日現在何も語られていない。
事故の状況は、事故調の簡単な速報やネット上に流れているニュースからおおよそ以下のようのもののようだ。
2017年11月8日14時25分頃、群馬県上野村大字乙母(おとも)の藤沢橋付近の道路に東邦航空株式会社の大型ヘリ:アエロスパシアル式AS332L型(JAJA9672)が墜落炎上した。搭乗者4名は全員死亡。
事故機は当日東京電力の送電線工事の資材運搬作業を行い、終了後14時03分に山梨県南巨摩郡早川町内場外離着陸場を離陸し栃木県芳賀町の栃木ヘリポートに向かっていた。
墜落前に部品が飛び散っていたことが目撃されておりテールロータはやや離れた場所で見つかっている。フライトレコーダは搭載されていない。
搭乗者はパイロット:北川一郎(60)、整備士:杉山勝彦(50)瀧沢俊太(27)池田裕太(22)
北川パイロットは総飛行時間1万時間以上のベテラン。

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墜落により配電線が切断されあたりで停電が発生した。
機体は1987年12月に三井リース事業により新規登録、定置場所は仙台空港、登録上1995年12月に一旦東方航空に登録されるがすぐにクラウンリーシングというリース会社に登録、同社が倒産後1998年にオリックスアルファの登録となり2000年に東邦航空の登録となった。リース会社の所有が転々としたが運用者は一貫して東邦航空であったことが推定される。製造番号は2173。エンジンはフランス製のチュルボメカ・マキラ1A、最大1800shp の双発。
同型機は軍用も含め世界で500機以上が使われている。国内では海上保安庁はじめ15機程度が現用されている模様で大型ヘリとしてはポピュラーな機体。
機体の総飛行時間は明らかではないが
この機体より1年前から同様に運用されてきたと思われ5年前に屋久島で墜落した同型の朝日航洋の機体(JA9635)の事故報告書では1万時間を超えておりこの機体も少なくとも1万時間は越える総飛行時間であったと推定される。

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事故当時の気象は、日本列島は気圧の谷に入っており南と北を通過中の2本の前線に挟まれ群馬から山梨にかけては帯状の雲の帯の下にあった(左図 当日14時の衛星写真)。
事故当時の気象観測データは横田基地、松本空港、静岡空港のMETARデータが参考になる。
横田基地データでは上空7000ftの高層雲に覆われている、松本空港では上空17000ft、静岡空港では上空10000ftの高層雲に覆われているとあり、事故地点周辺

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の山の高さは2000m(約7000ft)クラスであることから、場所によっては雲底と山の高さの差は小さかった,即ち対地高度をそれほど上げられなかった可能性がある。
当時の風は現場の高度2000-3000m付近では西風15-17mと予測されている(MSMデータ)、それなりの風だ。

現地の地図及び御巣鷹山事故現場との位置関係、飛行予想ルートを示す。

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出発地の早川町から北上し小梅線東の山稜部の低いところから群馬側に出て栃木へリポートに向かおうとしたものと思われる。御巣鷹山の墜落現場の北東11kmの地点で、結構近い。
事故機は当日も作業に従事しており帰路突然飛行不能になる整備不良が発生するとは考えにくいことから何かに衝突あるいは接触して機体の一部が損傷、不時着しようとしたがそれも叶わなかったという事態が最も考えられるように思える。墜落地点は着陸もできそうな場所だったのも気になる、ここへ不時着しようとしたのではないか。
低い雲がありこれを避けようとしてあおられて木か人工物に接触したのかもしれない。ただ、墜落時の付近の停電は配電線(道路脇の電柱)切断のためと東京電力が説明しているようなので送電線(高圧鉄塔)接触切断は無かったとは思われる。

今後の調査から原因は次第に明らかになってこよう。どんな教訓が引き出されるだろうか。

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