ハンブルグトリオと世界の平和
アクロスの9月のランチタイムコンサートはハンブルグトリオというピアノトリオの演奏
だった。全く知らない名前だったが、メンバーから良さそうなイメージがあったので聴きに行った。塩貝みつる という女性ヴァイオリニストの他はヨーロッパ人のチェリストとピアニストで、2013年ハンブルグで結成、ドイツを中心に世界的に活動、来日は3度目とある。ともかくアクロス会員なら900円で聞けるので行かない手はない。
思えばピアノトリオの演奏は生で聞いたことはない、CD/レコードでもあまり覚えがない、確かベートーベンの大公トリオという曲があったかもしれない、とそれくらいだ。
演目はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番と第2番だ。勿論聞いたことがない曲だがメンデルスゾーンなら華やかだろう、ともかく昼ののんびりした時間にいい音楽を聴くのは心休まるだろうし、もし眠くなればそれもいい、それくらいの認識だ。楽な気持ちで聴けるのがいい。
会場に入るとメンバー変更の紙が配られる、チェロのリトアニア生まれのヴィタウタス・ゾンデキスがドイツ生まれのウルリッヒ・ホルンに代わったとある、急病らしい。うまく代われる人がいたものだと素直に思う。
舞台配置はピアノは一番奥で前にバイオリンとチェロが出る、座った席は前から6番目で、少なくともピアノがガンガンひかれてもこの配置なら聴きづらいということはなさそうだ。
曲は第2番から始まる、ピアノトリオだけれどもヴァイオリンが前面に出てきて聴きやすい。ただ、あまり面白い曲でもないな、そんな感じだ。アンサンブルはさすがの感じがする。1楽章終わるごとに会場から拍手が湧く。確かに楽章ごとに完結したような雰囲気がある曲のように思えるが、要するにほとんど知られていない曲を演じるとこういうことが起こるのだろう。なんでも受け入れなければならない。次は第1番だ、何で逆順にしたのかと思ったが演奏を聞いていくと何となく納得する、こちらの方がいい曲だ。ピアノ、ヴァイオリン、チェロが独立して絡み合って透明な交響曲でもあるかのような響き合いがある。音は発せられたその時にその空間に消えて行ってしまう、それを聞いた心地しか心に残らない、今からその演奏を細やかに思い出すことはできない、でもいい感触の響きを聞いたその時の様が絵のように流れて心に残る。
楽章ごとの拍手には興をそがれるところもあったが総じていいコンサートだった。今回のツアーは福岡を皮切りに九州、中部、東京と11日で8か所を巡っていく、大変だ、音楽を生業とする音楽家はこうするのが仕事なのだからとも思うが、聞かせてくれてありがとうと思わざるを得ない。
クラシックの演奏家といえばこのコンサートの数日後に中学の同窓会総会があったが、この席で現在ミラノ拠点にソプラノ歌手として活躍している若い後輩が、幹事の卒業年次の当番が回ってきたのに合わせてわざわざミラノから帰国して歌を数曲披露してくれた。こちらは会場の音響が今一で勿体ない感じもしたが、さすがの歌声だった。
たまたまだがこんな風に続けてヨーロッパを拠点に活躍する日本の音楽家の演奏を聴くと、日本は世界に向かって芸術家を輩出し続けていることに改めて気づかされる。ベルリンフィルのコンサートマスターの一人も日本人だ。
その後には今月は大坂なおみの全米テニス優勝のシーンもあった、ここにも通じるものを感じる、動きつつある世界の何かに触れた感触がある。
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