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2019年2月24日 (日)

アラビアのロレンスの「知恵の七柱」を読んでいる

映画アラビアのロレンスのモデルとなったTEロレンスの著作を読んでいる。
この間まで放送大学の「現代の国際政治」というのを学んでいたのもあって、争いの絶え

Lawrence

ない中東の近代の歴史が気になっていた。
第一次大戦でそれまで中東を支配していたオスマントルコがドイツ側として戦って敗戦しアラブ民族の世界が戦勝国イギリスやフランスに操られながらも一気に国として現れてきたというあたりから面白くて、そうか、「アラビアのロレンス」はそこをついた話だから多くの人の記憶に残る映画になったのかと勝手に合点していた。
TEロレンスはその後オートバイ事故で亡くなったが、亡くなるまでにアラビアで経験した戦いの記録を詳細に本にまとめていた。その本が「アラビアのロレンス」の映画の元になったと何かで読んで(多分ネットで)その元の本というのを読んでみたくなった。「知恵の七柱」及びこのダイジェスト版ともいえる「砂漠の反乱」がその本に当たる。
先ずは「知恵の七柱」からと読み始める。軍人の残した戦記だからポキポキした文体で事実を箇条書きのように書いたものではと思っていたが、図書館から借り出して読み始めてみると全く違う。情景描写が詳細で、おまけに背景となった政治情勢やアラビア人の気質アラビアの風土をよく見て書き残している。国際政治の記録としても社会学の記述としても興味深い本だ。ロレンスの人間としての能力の高さを感じてしまうが、冗長ともいえるくらい書き込んでいる。暫く読んでいくと読み疲れて進まなくなる。「知恵の七柱」は途中でお休みして「砂漠の反乱」のほうに移ってみる。こちらは事態の展開を淡々と描いている風があってとにかく読み進めれば終わりまで到達する。
第一印象は映画アラビアのロレンスの物語と全くといっていいほど違っているということだ。勿論アラブ人を率いて砂漠を越えアカバに攻め入る更にダマスカスに入城するという大筋の部分は変わらない、しかしその時に展開する人としての物語は全く違う。訳者の解説を色々読んでみると映画は脚本家が描いたといってよいくらいでロレンスの著作との共通部分は数パーセントしかないといっている評論家の話が紹介されたりしていて皆同じような感想を持つようだと感じてしまう。
少し立ち入るとそもそも「知恵の七柱」についても完全版というのとそうでない版の2種類が同じ東洋文庫から出ていて、ややこしい。翻訳版がというより原本がこの2種類あるという。ロレンスは戦場から戻ってメモや記録をもとに「知恵の七柱」の最初の原稿を書き上げたが程なく盗難にあい原稿の大半を失ってしまった。直ぐにも書き直すべきだとの友人の勧めもあってもう一度書いた。これをまずは校正のために7冊刷ってもらったのが完全版になった原稿という。ロレンスは読み直して長いと感じ3割ほど圧縮したものを又作ったこれが後に簡略版と俗称され最初に出版された「知恵の七柱」となった。ロレンスは完全版出版の意思はなく、死後簡略版の著作権が切れたところで研究家が元の原稿を用いて出版したのが完全本と称されている。
両方を読んだ人は殆どが完全本がいいと言っているようだ。簡略版では人に気兼ねして削ったり表現を替えたりもしているようだ。そこまで読むと、これは完全本を借り読んでみなくてはなるまいとこれも図書館から借りだし読み始めた。最初に読みかけたのは簡略版の訳本だった。読み始めるとこちらの方が解りやすい。訳者も違って新しいだけに読みやすいということもあるのかもしれない。

結構印象が違う。まずは完全本の頭の部分にある詩が簡略本にはない。ここらからその違いが直ぐに感じられるようになる、完全本の方が叙情的だ。章立ては初めの1章はだいぶ削って、章を2章と合体するようなことをやっていて進むと大体完全本の章の2つ遅れが簡略版の章となる。まだ読み比べているのは初めの方だけだがそんな違いだ。
完全版は訳本で5巻まである、最後まで読めるかどうかわからないが、ゆったりと読んでいる。活字の海に浸ることそのものが心地いいそんな気もしている。
近頃は時間をあまり気にしなくなった。昔親しく言葉を交わしていた友人が病に倒れた亡くなったとの話がこのところまたかと続くようになってきて寿命に限りがあることがリアルに感じられてきた、あきらめの境地になってきたのかなと思う。
やれることには限りがある、瞬間瞬間だけが生きている実態のようで焦ることはもうどこにもないと今は思っている。

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