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2019年8月12日 (月)

「恐怖の男 トランプ政権の真実」を読む

 

ボブ・ウッドワードの書いたトランプ政権暴露本 『恐怖の男 トランプ政権の真実(Fear: Trump in the White House)』をこのところ読んTrump2a でいる。例によって図書館に予約しておいたのがやっと順番が回って今頃になってしまったという次第だ。
原本の米国での出版は去年(2018年)の9月11日というメモリアルデイになっている、如何にも話題ねらいの出版という感じがする。

ボブ・ウッドワードはワシントンポストの記者としてニクソン政権のウオーターゲート事件を暴き政権の崩壊に導いたことで有名だが、このトランプ本を書いた時点でもワシントンポストの現役で、副編集長の地位にあったという。今回のこの本は政権崩壊に導くかというと全くそんな感じでもない。淡々とした本だ。

日本語版の出版は同じ年の11月20日に日経出版から出されているが2か月余りで和訳出版できたのはいかにも手際がいい。訳者は伏見威蕃氏1名の名前になっているがサポートした人が何人かはいたのだろう。先行したトランプ本「炎と怒り」(マイケル・ウォルフ著、1.5ヶ月で和訳出版)ほどではないが素早い。
500ページ位あって結構厚い本だ。
内容はボブ・ウッドワードが関係者からのインタビューで情報を取得しこれを基に神の目で見た様な形でトランプ政権内のやり取りを記述している。基本的に3人称だが時々「私」ボブ・ウッドワードも現れてはいる。
前読んだ「炎と怒り」でも感じたが、トランプの行動そのものはそう異常なものではない。国際関係であっても冷たい政治力学ではなく血の通った人間同士の話し合いやつながりを重視して政治にパッションを織り込もうとしている、普通の感覚の持ち主だ、そのことそのものが今の世界を動かしている冷たい計算で満ちた世の中のアンチテーゼであるのだろう。こういう人が出てこざるを得なくなっている現代というものの行き詰まり感を感じてしまう。トランプ政権を支えている人々は相変わらず軍人でありゴールドマンサックスやエクソンで泳いできたクールな企業人が殆どだ。トランプ流の判断とはどうしても合わなくて、辞任ばかりが目立つ。もっとこらえ性のあるスタッフは居ないものかと思ってしまうが、それがエスタブリッシュメントで固められたこの世界の問題点なのだろう。小学生並みの理解力だと悪口を言うよりそんな人がなれた大統領に何故自分がなれないのか何故トランプは多くの国民の支持を集めえているのか考えるべきなのだろう。

大半は驚くような内容でもないが今の時点で読んでいて少々引っかかるのはトランプは韓国の文在寅を嫌っているというくだりだ。トランプは就任早々からKORUS(米韓FTA)の破棄、在韓米軍駐留経費の負担増を繰り返し主張してきている。これは今も続いていて1週間前のニュースではボルトン国務長官が大幅な駐留経費負担増を韓国に要求したと報じられている。対韓で安倍政権が現在やや強硬に出ているのはトランプが文在寅を嫌っているというのを知った上での安倍の決断ではないかと思えてくる。米国は韓国の側には立つはずがないとの確信があるのではなかろうか。

それにしてもこんな本が相次いで出版されるところにアメリカという国の強さがある気がする。日本ではとてもこんな本は出せないだろう、辞めたといってもこんな風に内部情報を次々に記者に提供する政権高官が出てくる状態は日本ではちょっと考えられない。政治史を後で研究するにはこんな本は貴重な資料となるだろう、ある種の透明性が確保されている、そこに強さがある。

日本の方が息苦しい世の中を現出しているようだ。参院選挙で感じられた閉塞感、誰かが決めた候補者の狭い範囲からの比較選出を迫られる無意味な選挙、もう現実世界に対処できなくなっているシステムをそこに感じる。変えなければいけないところに来ている、日本にこそトランプのようなエスタブリッシュメントの壊し屋が必要なのだろう。

 

 

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