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2019年9月 9日 (月)

アランフェスを聴く

 

Aranjuez 九州交響楽団の9月の定期演奏会でアランフェス協奏曲を初めて生で聞いた。

近頃は暑いのもあって遠出しなくなった。年齢もあるかと思うが暑い、天気が悪い、足が痛い、とダメな理由ばかり思いついて、ぐるぐるとネガテイブサイクルに入ってしまっている。こんな時はせめても音楽を聴きに出かけることでもせねばと思ってしまう。
アクロスの次のコンサートはと見るとアランフェスとなっている、演奏は九州交響楽団にスペインのギタリスト(アギーレ)で指揮も南米の気鋭の指揮者らしい(レーニンガー)。この前九響は聞いたばかりとの気がしていたが、これは聴くべきかなと思って切符をネットで手配する。手配の時期が遅いのもあって前から3列目の右寄りの席となる、前回同様随分と舞台に近い。全体を見渡すことはできないがギターを聞くだけなら前がいいので、今回はそう悪くもない。

「ひらおのてんぷら」で夕食を済ませてホールに入る。入ると間も無くロビーコンサートでファゴット2本の演奏がある。楽器を見てああバスーンか、と思っていたらファゴットという。どうみてもバスーンと昔教わった楽器のように思えるが何が違うんだろうと戻って調べると、少なくとも日本Acros0830 では同じものを指すようだ。ドイツ・フランスではファゴットといい英語圏の英米ではバスーンというと思っていいらしい。何も争っているわけではなくフランスにはバソンという似たようだが違う楽器があり区別する意味でもファゴットと呼ぶのが自然のようだ。
日本では20年くらい前に音楽指導要綱でバスーンからファゴットへ呼び方を変えたらしい。いかにも日本的だ。名前一つでも色々経緯があって面白い。演奏の方は安らかに心地よく聞けた思いはあるが細かくは思い出さない、音楽はその場で空中に消えてしまうのが本質だ。
本番の演奏プログラムはファリアの三角帽子から1曲あって(第1番)、アランフェスとなる。
ギターの音はオーケストラに比べ随分音が小さいためかギターの前にマイクとそばにスピーカーがセットされる。しようがないのかなと思うが、1楽章冒頭のギターが威勢良く始まると不自然なところはまるでない。生の音がそのまま聞こえているように思える。
昔からレコードやCDで繰り返して聞いた曲で、自分でもギターで昔少し弾いてみたこともある曲なので、のめり込んで聞いていく。ギターとオーケストラの掛け合いが実にスムーズだ、せいぜい数日のリハーサルがあっただけと思うがフレーズの受け渡しがギターからオケへオケからギターへと流れるように動いていく。それにしても圧倒的に巧みなギターだ。2楽章後半に聞きなれたのとちょっと違うところが出てアレ間違えたかと思うがそういう演奏なのかもしれない。オケも含めていい演奏だ。
万雷の拍手でアンコールにギター独奏のパコデルシアのフラメンコとアルハンブラが演奏された。それぞれアンコールというより立派なプログラムとしてもいい曲だ。いい雰囲気を漂わせたまま休憩に入る。
休憩の後はバーンスタインの曲(管弦楽のためのディヴェルティメント)と南米のヒナステラの組曲(エスタンシア)と初めて聴く2曲だ。バーンスタインの曲は1980年にボストン響の百周年の記念として作られた曲で小澤征爾の指揮で初演されている。どこかウェストサイドストーリーに似たフレーズで始まり次々に脈絡なく曲想がつなげられていく気がする。演奏そのものは現代の曲らしい上下運動をよく表現していてこのオケAguirre に合っているという気がするが曲自体がピンとこなくて、そうですか、という感じだ。ヒナステラの曲はこれとは随分と趣が違うがどこか単調であまりいい印象を持てなくて終わった。アンコールでもう1曲演奏したのが活気があって立体的でリズム感が良くてこれはいいという印象を受けた。アンコール曲が何だったか後で調べようとしても直ぐにはわからない、snsの書き込みではヒナステラの曲の最後の楽章をまたアンコールでやったとする書き込みに幾つか行き当たる、えっと思う、とてもそんな感じではなかった、ノリが全然違った。未だに不思議だ。空中に消えてしまった音楽はどうしようもない、そういうところが演奏会の面白いところなのだろう。
終わってギタリストのアギーレのサインをCDにもらって帰る。サインがあるとその場では消えてしまった音楽や雰囲気が後で想い起こしやすい。思い出とともに時を過ごしていくことに備えているわけではないが そんなことも考えてしまう。
もう秋がそこまで。

 

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