バロックがいい
時々クラシックのコンサートを聴きに行く。クラシックにこだわっている訳でもないが、2時間前後の時間にそれなりのお金を払うほど聞きたいというポップスやジャズのコンサートもない、どうしても気安いクラシックのコンサートになってしまう。
主張の多い歌や曲は「注文の多い料理店」のようでどこか気持ちが乗らない、もう年なのだろう。
5日ほど前にアクロスのランチタイムコンサートを聴きに行った。今回は福岡で毎年秋に開かれている古楽器の音楽祭のプログラムにもなっていて、バロック室内楽を当時の楽器の形態で演奏している。
曲はヴィヴァルディ:チェロ協奏曲 ニ短調 と リコーダー協奏曲 ハ長調 、マルチェッロ:オーボエ協奏曲 ニ短調 、バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第2番 へ長調 の4曲だ。 最初の3つは初めて耳にする曲名で最後のも多分聴いたことがあるのだろうが覚えてなくて初めて聞くも同然の状態だ、しかしいずれもとても聴きやすい。演奏時間は合計で1時間と少しくらいだが、この位がちょうどいい。CD1枚分というかLP1枚分というか、適度な量のような気 がする。
ヴィヴァルディの曲はいずれも「四季」を思い起こさせるような音の繋がりで初めて聞いた気がしない。楽だ。
楽器で面白いのはバロックオーボエとバロックトランペットだ。バロックオーボエは歯切れが良くてまるで金管のように良く音が出る、これに対しバロックトランペットはバルブなしで曲を奏でるという不可能に思える演奏だけにどこか音が定まらずフワフワしている、ピシピシと奏でるバロックオーボエと組み合わせるとその危うげな音程が曲を柔らかくしているようで、そういうところがバロックらしいという気がしてくる。今の楽器で演奏したのではこんな味は出てこない、バロックはその時代の形態で聴くべきのようだ。それにしてもこれは難しい曲だと今更のように思ってしまう。楽器の進歩で安定した音がいつも出てくるとなってくると失われたものが色々あると思えてくる、ちょうでレコードからCDへ変わって針音やホコリに悩まされることは無くなったが何か肝心なところで失ったものがある、という感じに似ている。そうはいっても後ろ向きではつまらない、前に進みながら失ったものをも取り戻して、そのうち新しい世界が生みだされてくるのだろう。
デジタル技術の先にあるに違いない豊かなアナログへの回帰はいつ訪れるだろうか。100年位先だろうか。
そこまで見届けることはできそうにないのが心残りだが、命をつないでいけば自分のDNAの大部分は勿論その時代を眺めることになるのだろう、命のそういう所が面白い。兎にも角にも今は気楽に生きてていけばいい、そう思っている。
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