大授搦で地球を巡る渡りに出会う
一週間ほど前、10月15日のことになるが、久し振りに有明海の北岸の干潟、大授搦(だいじゅがらみ)に行ってみた、大潮の終わりがけで、満潮時刻が10時頃、潮位は5.2m位と比較的行きやすい条件だ。このタイミングを外すと秋はもう行きにくくなるような気がしていた。道が思いの外混んでいて満潮30分前の到着となってしまったが、クロツラヘラサギ、ダイシャクシギ、等々と色々姿を見せいつものように見ごたえがある。小型の鳥ではダ イゼンが多い。ムナグロやオオソリハシシギにも会えた。この3種は南半球からベーリング海まで太平洋を大飛行して渡ると文献では紹介されている。特にムナグロは春は極東経由で北へ向かい、秋はハワイやその東を一気にベーリング海からニュージーランド辺りまで渡るとされている。勿論例外もいて逆回りか又は来たコースを逆に戻る鳥もいるようだ。
ムナグロとダイゼンの判別は厄介だが、黄色っぽいのは明らかにムナグロだ、また飛ぶ時の羽の根元に黒いところがなければムナグロだ。見直してみると今回写真に撮れたのはダイゼンばかりでムナグロは数としては少ないようだ。
10-15年位前に何度かハワイに行った時、ムナグロ(PACIFIC GOLDEN-PLOVER)に出会っていた。3月と11月の春秋のいずれものシーズンで出会っていたのでいつもいる鳥かと思っていたが大飛行をする渡り鳥だと知って渡り途中だったと改めて認識する。 7年位前にアメリカの研究者がアラスカとサモアで発信機をムナグロに取り付けて渡りを調べたところ春はサモアから日本経由秋はアラスカから直接南下でサモアへ向かっていることが解ったということのようだ (右図、文献1)。
勿論気象条件なども影響しているのだろうが驚くべき渡りだ。
3月にハワイにムナグロがいたのは必ずしも全員がこのルートを飛ぶわけではないのを示している。また秋にも日本でムナグロが観測されるのをみても色々いるなと思う。
この時期日本にムナグロが来ていたのはこのところ立て続けに台風や低気圧が日本を通過した後アラスカに次々に向かったのもあるのかと思っている。この配置では日本側のルートは北風になりがちで南に渡るのに好都合だ。小さい鳥だからそこは無理せず飛びやすいルートで南半球まで渡ったのだろう。
今回オオソリハシシギもいた、この鳥も同じようなルートで飛ぶことが計測されている。それに しても何で手軽な南極に向かわないのだろうか。一度夏の北極に行くと簡単には夏冬が逆な南極を夏を過ごす場所として選べなくなるのだろうか、南極の方が緑が少なくて生きていきにくいのがあるかもしれない、色々考えてしまうが考えるのが面白くもある。
時々大授搦に来ていないと干潟に来る渡り鳥の見方を忘れてしまう、あれ何だっけ、ばかりになってしまう。頭も回らなくなる。そうならないためという口実の下にまた時々こよう、いつもそう思っているが、そうは来れない。
こんな繰り返しで今年ももう終わりが見えてきた。気ままに鳥を見て遊ぶ、学ぶ、こういう緩い生き方を結局は望んでいたのかもしれない、今はそう思っている。
1)Johnson O.W. et al. 2012. New insight concerning transoceanic migratory pathways of Pacific Golden-Plovers (Pluvialis fulva). Wader Study Group Bulletin 119: 1-8.
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