冷凍マンモスと果てしない温暖化議論と
やっと寒くなってきた。北極振動はどうなっているかとNOAAのサイトのAOの所を見るとインデックスがプラス側に大きい(即ち極渦が強く寒気が北極から漏れ出してきにくい--所謂暖冬傾向)状態が終わりになりつつある、北半球はこれから寒くなるモードに入っていきそうだ。地球全体がそうなのかと少し安心もする。
気象関連のサイトやメールを見ていたら気象学会による一般向けの気象教室と銘打った講演会が福岡市の科学館で催される、予約不要・入場無料、とある、少し気になって行くことにした。随分と気楽だ。
科学館といえばちょうど冷凍発掘したマンモスの展示をやっているところだ、これも見てみるかと少し早めに出かけた。まずはマンモスだ。シベリアの奥地永久凍土から自然の中で冷凍保存されたマンモスが発掘されている話はこれまでにも聴いたことがあるがその現物が展示されているというから興味深い。入ると次々に発掘された殆ど生のようなマンモスの体の一部が展示されている、ひげは触らせてもくれる、2万年前の古 生物の遺物でこんな姿は考えられない。鼻を発掘した時の映像もあって鼻を切り離したため体の血液が流れ出している様も記録されている、驚くばかりだ。(写真は歯、殆ど生のようだ)。DNA採取もされていてジェラシックパークさながらの再生も可能ではないかとみられるが再生の土台にするゾウは絶滅危惧種で実験でゾウの命を実験で奪うことは許されないのが壁になっているというから色々だ、マンモスの他にも小型のウマ等絶滅した生物が色々凍土の中から発見されていて、これからの展開が面白そうだ。いいものを見た。
肝心の気象の講演会の方は、地球温暖化に関する講演で、温室効果ガスの計測を旅客機に機器を取り付けて長期間計測する話と人工衛星からリモートセンシング技術で温室効果ガスを計測する話の2つだった。いずれも専門的だが丁寧に話してくれて面白い。
地球温暖化の議論は結局はシミュレーション計算に基づく予測で今後着実な気温上昇が予測されているがこれは人為的な原因が大きく何とかこれを抑える努力を世界が協力して行うべきだ、という話と思っている。懐疑論も根強くあって、ロジックとしてはそうだがそんなにシミュレーションに信頼がおけるのか、事実は違っているのではないか、というところに議論があるようだ。確かに気象の長期予報は頼りになるのはせいぜいが1か月くらいで3か月の季節予報は大抵はずれているという現実がある。プリミティブな疑問を解くには問題の温室効果ガスがどう増えているのかというところを具体的に明らかにし、それが計算通りか明らかにする必要がある、これまでの計測データは地上の限られた地点のデータで温室効果ガスがどこでどう増えてどう廻っているのか、データはなかった、これが次第に明らかになってきたということのようだ。まだ温暖化議論全体の信ぴょう性を検証するところまでは辿り着いていないようだが、今回の話としては特に2番目の人工衛星いぶきによる計測のデータが興味深い。
季節によって場所によって温室効果ガスの濃度は大きく変化しており、一部は成層圏から宇宙に抜けているようでもある。(図は緯度高度で濃度の月別変化を示したもの)。場所による変動が地 球全体のガス濃度の議論しているオーダーの2オーダーくらい上で、大きなものから大きなものを差し引いたような僅かの濃度の変化量が結果的に重大な気温の上昇を招くという議論になっているようだ。
地表は温暖化しても高層大気は寒冷化しており地球全体の大気としては温暖化も寒冷化もないと講演者が述べていたのも印象的だった。
こんなのを聞いていると、これとは別に日々眺めている気温の垂直分布の変化を見ていても人間の感じている気温は大気層の最下部の特異な動きを示す狭い部分に限られていてこれに対しあまりに近視眼的な議論をし過ぎているのではないかとも感じてしまう。
海洋や大気中の水蒸気などの温暖化ガスの吸収放出、成層圏への放出などのモデルが気象計算のように全球で行われるようになりこれが計測データで日々更新されるようになれば人類としてやれる範囲のことが明確に分かってくるのだろう、それはもう数年もすれば可能になるのだろう、そうしたしっかりした科学的知見の元での議論が必要と思えてならない。今の議論は感情的にすぎる、恐らく議論できる技術レベルに人類がまだ達していないのだろう。
マンモスではないがあと2万年もたつとあらゆる議論は消し飛び事実だけが残されれているのだろう。どういう形になるにせよそういう未来が確実にあるというところが面白くもある。
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