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2020年3月31日 (火)

麦と兵隊を読んでみた

コロナ騒ぎで自宅にいる時間が多くなり、本を読むことが増えたような気がする。

Mugiarmy 火野葦平の本を又読んでいる。今度は代表作の一つと言われる「麦と兵隊」だ。
昭和13年5月に行われた徐州会戦に報道部員として参加した際の従軍日記の形をした作品だ。著者はこれは小説ではない記録だとしている。作品はその年の8月に雑誌改造に掲載されていて、単行本の出版もすぐに行われた、素早い。翌年には英訳本がニューヨークで出版され世界中の多くの人に読まれる状態にも至っている。当時世界中の人が知りたかった人間的な目で見た日本軍の内部の状態というものがリアルにそこに描かれていたからだろう。「大地」の著者パールバックも称賛を送ったといわれる。戦前に出版された戦記物では異例のことのように思われる。

確かに読んでみると、普遍性のようなものを感じる。非常に正直に当時の雰囲気を表しているとともに戦争の文字通りの汚さをリアルに描き出している。戦後に出版された戦記物といわれる小説をいくつか読んだことはあるがここまでのリアルさを感じさせるものはなかった。出版されてすぐに大きな話題となって多くの人に感銘を与えたようだ。軍部におもねっているところは感じられず正直な心情の吐露がある、そうではあるがあからさまな戦争批判というのもない。当時の国民の雰囲気を含めて戦争の実際をきちんと記録しているように見える。文学者がその時になすべきことを正しくやっていると感じられ、人間史の見事な資料となる作品のようにも思われる。

「花と龍」には少々失望していたがこれはいい本だ、少し安心すら覚えた。
こんな風にして3月も終わってしまう。この先どうなるだろうか、対コロナの治療法が確立できるまで感染を免れきれるだろうか、不安を引きずりながらの日々は続く。

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