「糞尿痰」を読んでみたり
戦前の候補になりながら芥川賞をとれなかった作品を読んでいた(「芥川賞候補傑作選 戦前・戦中編 1935-1944」)。太宰の取れなかった第一回の候補作品「逆行」も読んでみたが、短編の3つの集合で、色々言われるが、確かにやや物足りないところがある。新人に与える賞なので
取り損なっても評価される作家は却ってもう取りにくい、最初に取れなかった太宰が生涯取れなかったのも当然といえば当然のような気がする。
第6回の受賞は火野葦平の「糞尿痰」だったが決まった時には召集され中国の戦場にいたため小林秀雄がわざわざ中国・杭州に出向いて賞を手渡したという。これを契機に火野は戦場で「土と兵隊」「麦と兵隊」などのリアルな戦場を描いた小説を書き続け世に大きな話題を提供したようだ。

第6回の受賞は火野葦平の「糞尿痰」だったが決まった時には召集され中国の戦場にいたため小林秀雄がわざわざ中国・杭州に出向いて賞を手渡したという。これを契機に火野は戦場で「土と兵隊」「麦と兵隊」などのリアルな戦場を描いた小説を書き続け世に大きな話題を提供したようだ。
この時選ばれなかった中谷孝雄の「春の絵巻」も載っていたので読んでみたがなかなかうまい。「糞尿痰」の方はどうだったんだろうと、読んでいなかったので読んでみるかと青空文庫に入っているのを読み始めた。
し尿組合の話だが後に書かれる「花と竜」の沖仲仕組合の話からの着想のように思えてしまう、似ているところが色々ある。火野葦平にはその時目の前で展開されていた「花と竜」の世界が強烈だったのだろう、しかし臭い話だからなんとなく一気には読めない、社会の暗い部分の話でもある。ともかく臭い話というところがいかにも強烈で、青春の繊細な恋愛感情の揺らぎを描いた「春の絵巻」は確かにこれにはかなわない。
伊藤永之介の「梟」も第4回に候補になっていてこれに手を入れ直したものが第6回で再び候補になっていたが選者には殆ど支持されずに落選している。第4回の時の「梟」が収録されていたので読んでみる。東北の小作農家が食っていけずにドブロクを密造して夜陰に紛れて売り歩くのを梟と表現しているのだが、これも社会の暗い部分を描いていて、余りにきつい話が次々に折り重なるので読み続けるのが苦しくなる。こちらは最後までは読み切れなかった。どうも太平洋戦争になだれ込みつつあった戦前の世界は歪だらけで社会の暗部があちこちにあった気がする。
それにしても、芥川賞を取れなかった作品に共通しているのは勢いのようだ、どうも不足している。
し尿組合の話だが後に書かれる「花と竜」の沖仲仕組合の話からの着想のように思えてしまう、似ているところが色々ある。火野葦平にはその時目の前で展開されていた「花と竜」の世界が強烈だったのだろう、しかし臭い話だからなんとなく一気には読めない、社会の暗い部分の話でもある。ともかく臭い話というところがいかにも強烈で、青春の繊細な恋愛感情の揺らぎを描いた「春の絵巻」は確かにこれにはかなわない。
伊藤永之介の「梟」も第4回に候補になっていてこれに手を入れ直したものが第6回で再び候補になっていたが選者には殆ど支持されずに落選している。第4回の時の「梟」が収録されていたので読んでみる。東北の小作農家が食っていけずにドブロクを密造して夜陰に紛れて売り歩くのを梟と表現しているのだが、これも社会の暗い部分を描いていて、余りにきつい話が次々に折り重なるので読み続けるのが苦しくなる。こちらは最後までは読み切れなかった。どうも太平洋戦争になだれ込みつつあった戦前の世界は歪だらけで社会の暗部があちこちにあった気がする。
それにしても、芥川賞を取れなかった作品に共通しているのは勢いのようだ、どうも不足している。
大して読んでいるわけでもないのだが、最近良い小説に出会わない。自分の中で良い小説に対する基準がありえないほど上がっているのかもしれない。歳を取るのも難しい。
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